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大量破壊兵器から命守る「センシング」日本の実力 経済安全保障という新たな舞台でも再び脚光

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政府案で注目すべきは、駅や空港のみならず、災害現場の危険物質や工場等の有害物質も検知できる分析システムの実現を目指していることである。つまり防災や治安、防衛、民間の幅広い分野で活用でき、安全・安心な社会を支える「マルチユース(多義的)」な技術を念頭に置いている。防衛産業であれ、製造業であれ、素早く危険を検知する技術は人々の命を守ることにつながる。

センシング技術の社会実装にあたり、これまでの大きな課題は誤検知だった。検知できる剤や危険物質を増やすとともに、検知の精度を高めていくことが重要だ。あわせて、イラクなど紛争地で活用された日本企業のネットワークカメラや、飛躍的な発展を遂げた画像解析AIと組み合わせることで検知能力の向上が期待できる。

マルチユース技術としての社会実装と国際展開

かつてサリン事件や炭疽菌テロ事件の惨劇を目の当たりにした政府当局者や研究者の熱意は、検知技術の開発につながった。

そしていま世界は、大量破壊兵器を保有し、その使用にあたり自国の兵士を捨て駒にすることもいとわない国々やテロリストの脅威にさらされている。

CBRN脅威のセンシング技術は警察、防災、防衛、医療、産業界、そしてアカデミアの専門家が、ともに磨き上げていくべきマルチユース技術である。国民の命を守る技術の社会実装において、組織の垣根があってはならない。数千億円規模のK Programには、重要技術をめぐるエコシステム構築に向け、日本の英知を引き寄せる場としての力(convening power)があるはずだ。

さらに、この技術はアメリカや同志国とともに共同研究を進め、国際協力でも活用されるべきだろう。そのツールの1つが政府安全保障能力強化支援(OSA)である。OSAが想定している警戒管制レーダーのように、脅威をいち早く検知するセンシング技術は、日本が堂々と国際展開し、世界に貢献できる技術である。

(相良祥之/API主任研究員)

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