中国の不動産市場、7月は異例の冷え込みの背景 需要の息切れに新規物件の供給増が追い打ち

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不動産不況の長期化で、デベロッパー各社の資金繰りは厳しい(写真は広東省深圳市のマンション群)

中国の不動産デベロッパーの業績低迷が続いている。不動産情報サービスの克而瑞が8月1日に発表したデータによれば、業界上位100社による2023年7月のマンション販売額は3504億3000万元(約6兆9909億円)と、前年同月比33.1%減少。7月としては2019年以降の最低額を記録した。

上位100社のうち、7月の業績が前年同月を下回ったデベロッパーは全体の7割近くに上った。「例年7月はマンション販売のオフシーズンとはいえ、今年はとりわけ厳しかった」。財新記者の取材に応じた複数の業界関係者は、異口同音に語った。

「7月のマンション市場の低迷ぶりは、第一線の営業担当者のほとんどが経験したことのないレベルだった」。業界の上位30社に名を連ねる大手デベロッパーのエリア・マネジャーは、そう証言した。

キャッシュフロー確保が最優先

こうした厳しい冷え込みの背景には、需要が息切れしたタイミングに、新規物件の供給増加が重なったことがあると見られている。

「2023年の初めに(ゼロコロナ政策の解除をきっかけに)不動産市況が顕著な回復を見せたため、多くのデベロッパーが新規物件をできるだけ早く市場に出そうと懸命になった。不動産不況の長期化で会社の資金繰りが厳しいことから、資金回収を急ぐ必要があったからだ」。財新記者の取材に対して、複数の営業マンがそう口をそろえた。

ところが現実には、デベロッパーの思惑は大きく外れた。「物件の供給が増え始めたのは3月に入ってからだが、逆にその頃から需要が冷え込み始めた」と、克而瑞の総経理(社長に相当)を務める林波氏は分析する。

本記事は「財新」の提供記事です

しかし目下の不動産業界には、供給を調整して市況の回復を図る余裕はなさそうだ。「物件売却を急いでキャッシュフローを確保することが、デベロッパー各社の最優先の課題だ」。ある国有不動産大手の幹部は、業界の厳しい実態をそう打ち明けた。

(財新記者:陳博)
※原文の配信は8月2日

財新 Biz&Tech

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