「10年求婚し続けた男」を最後に選んだ彼女の発見 「毎月のように通い続けてくれたお客」と再会し…

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健太さんに聞きたいことがある。仕事とはいえ、他の男性とも寝ている女性と実際に交際することに逡巡はなかったのだろうか。

「雅恵は風俗嬢らしくありません。ブランド物のバッグなどは持たず、一般的な感覚を持っているところがいいなと思って好きになりました。そうであれば、彼女が風俗で働いていることは自分の中で消化するしかありません。生きていくのにお金が必要なことも感覚としてわかります」

「オレが結婚したいんだからいいんだよ」

雅恵さんのほうには迷いがあった。健太さんは本当に自分でいいのだろうか。私なんかと結婚してもいいことはないよ、と何度も口に出してしまった。不誠実を通り越して非道な恋人との16年間で自尊心が低くなっていたのだろう。

「でも、夫は『オレが結婚したいんだからいいんだよ。誰かに自慢したいわけでもない』と言ってくれたんです」

結婚直後に子どもを授かり、今は子育てに専念している雅恵さん。結婚するまでの41年間は本当にいろいろな経験をし、まさに生死の境をさまよったこともあった。だからこそ、今の平穏をかけがえのないものだと感じられるのだ。

「前の彼氏とのストレスで毎晩のように飲み歩いていた時期もあります。酔いつぶれて路上で寝てしまい、警察のお世話になったことも一度や二度ではありません。今は小さな子どもがいるので夜に外食することすらできませんが、すごく幸せです」

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そろってギャンブル依存症だけど夫婦仲はいい雅恵さんの両親。前の恋人に関しては「あれ人間のクズだ。お前は人を見る目がない。オレに似たのか」と雅恵さんに警告していた父親だが、健太さんのことは一目で気に入った。「結婚するべきはこういうヤツだぞ」と断言したという。どの口が言っているのかと思ってしまうが、彼なりに娘の幸せを願っているのだろう。

世間に対してずっと引け目があったという健太さんは、結婚して一児の父親になったことで「50歳にしてようやく一人前になれた」と感じている。今は風俗通いをやめ、自分の娘をひたすらに可愛がっている。両親や友人も雅恵さんとの結婚を喜んでくれているが、ソープランドではなくネットで出会ったことにしている、と小さな声で付け加えた。

でも、それはまったくの嘘ではない。風俗店をネット検索しているときに別の店に移った雅恵さんを発見したのだから、ネットでの出会いの一種ではないか。筆者がそう言うと、雅恵さんと健太さんは大笑いをしてくれた。この家族の前途には明るいものしか感じない。

本連載に登場してくださる、ご夫婦のうちどちらかが35歳以上で結婚した「晩婚さん」を募集しております(ご結婚5年目ぐらいまで)。事実婚や同性婚の方も歓迎いたします。お申込みはこちらのフォームよりお願いします。
大宮 冬洋 ライター

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おおみや とうよう / Toyo Omiya

1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに入社するがわずか1年で退社。編集プロダクション勤務を経て、2002年よりフリーライター。著書に『30代未婚男』(共著、NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『あした会社がなくなっても生きていく12の知恵』『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました。』(ともに、ぱる出版)、『人は死ぬまで結婚できる 晩婚時代の幸せのつかみ方』 (講談社+α新書)など。

読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京や愛知で毎月開催。http://omiyatoyo.com/

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