「領域横断作戦時代」の防衛装備・技術協力のあり方 日米共同を前提とした「キルチェーン」構築を

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自衛隊は、2000年代初頭から弾道ミサイル防衛などのために、防衛分野にIT技術を多く取り入れるようになった。2012年から尖閣有事に向けた具体的な検討を開始し、2018年に閣議決定された『防衛計画の大綱』に初めて領域横断作戦を盛り込んだ。

領域横断作戦は、陸海空という従来の領域はもちろん、宇宙・サイバー・電磁波を跨いで多様な装備品を接続することが前提となっている。

具体的に言えば、人工衛星や陸海空のさまざまな警戒監視センサーから得た情報を、リアルタイム性や抗堪性(敵の攻撃を受けた場合、機能を維持する性能)のあるネットワークを介して、司令部や部隊に伝送し、AIの支援のもと、これらの情報を分析評価することで、相手方よりも迅速かつ正確な意思決定を行い、最も効果的な物理的・非物理的手段によって対処する作戦である。

「キルチェーン」構築の必要性

領域横断作戦に限らず、あらゆる作戦を実施するためには、目標の探知・識別・追尾、その情報の迅速な伝送、適切な手段の選択と対処、さらにその成果を確認・評価する一連のプロセス(キルチェーン)を構築しなければならない。領域横断作戦は、このキルチェーンを、複数領域を跨いで連接する必要がある。

同時にキルチェーンがミサイルなどの物理的な攻撃、あるいはジャミングやサイバー攻撃などの非物理的手段によって切断されても、作戦を続行できるよう代替手段等を確保することも必要だ。

探知について言えば、多数の小型衛星で抗堪性を高めるだけではなく、地上配備型のレーダーや無人機など領域の異なるさまざまな装備品で補完・代替する手段を確保しなければならない。

同様に、情報伝送には、複数の周波数帯域や同盟国・同志国、あるいは民間の通信衛星など迂回路を確保し、対処手段も、陸海空のさまざまなプラットフォームからのミサイル等の攻撃手段、さらには電磁波等の非物理的な手段も揃えておくことが求められる。

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