米国発「政策立案」スキルが日本でも役立つ理由 「8つのステップ」で考える「地域人口減少」対策
しかも、そうしたプログラムは、50年近い歴史の中で改良が重ねられ、時代とともに進化してきている。カリフォルニア大学バークレー校公共政策大学院のプログラムの中で開発された「8つのステップ」は、未経験者が実践的なスキルを身につけられるよう、政策立案の段階ごとに様々な具体的なコツや注意点を伝授する。また、高度なエビデンス(証拠)に基づいた政策立案(EBPM)など、近時の流れにも対応できるよう発展してきている。
問題解決のための8つのステップ
「8つのステップ」では、政策立案の全体プロセスを以下のように分解する。実際に政策立案に取り組む際には、いくつかのステップが解決済みとなっていることや、ステップを戻ってやり直すことも想定されている。最初に全体像を俯瞰した上で、作業の段階に応じて、実務的なコツや注意点を参照できるようにしているのだ。
ステップ1:問題を定義する
ステップ2:エビデンス(証拠)を集める
ステップ3:政策オプションをつくる
ステップ4:評価基準を選ぶ
ステップ5:成果を予測する
ステップ6:トレードオフに立ち向かう
ステップ7:分析を止め、決定!
ステップ8:ストーリーを語る
「8つのステップ」は、様々な公的課題について、効果的に問題解決を行うために開発されたものである。体系的に可視化されて「型」となった、米国発の「政策立案」の技術は、日本においても十分に役立つ。
筆者らは数年前に、研修の一環で日本のある県を訪問し、「人口減少」対策についての政策立案を県庁から依頼された。「8つのステップ」を実践し政策立案した経験を踏まえ、今回、ステップ1からステップ4までのプロセスをどのように考え、実行していったのかを紹介する。
ステップ1:問題を定義する
筆者らが県庁から依頼された課題は「人口減少対策」であった。同県が行った調査によると、同県に住んでいることへの住民満足度は極めて高い。住居の面積も広く、子育てを地域で支援する文化がある。その一方で、他県同様に年々人口が減少し高齢化が進行しているため、人口減少対策に資する政策の立案を依頼された。
政策立案の最初のステップは、政策によって解決しようとする問題をしっかり定義することである。県庁から提示された課題は、「住民人口」「減少対策」という具体的かつ計測可能なものについてのものであり、初期の問題定義としては十分だ。ただし、そのままでは政策オプションの方向性が絞り込めないため、問題定義を修正することにした。
人口減少には自然減と社会減がある。前者は、亡くなる人が生まれる人よりも多いことが原因であり、後者は行政区域に転入する人よりも転出した人が多いことが原因だ。
同県の年齢階層別の人口を調べてみると、18歳の前後で人口が減少している。同県の17歳の人口を100とすると、19歳の人口は75程度に減少し、25歳の人口は80程度へと若干回復する。年度によって数字の変動はあるだろうが、高校卒業前後で一定数の人口が県外に移住し、その後一部は同県に戻ってくるものの、移住した人口の大半は県外に定住するとみられる。
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