米国発「政策立案」スキルが日本でも役立つ理由 「8つのステップ」で考える「地域人口減少」対策
自然減についてはどうだろうか。同県の出生率を調べてみると、「住みやすい」という県庁の認識どおり、日本でもむしろ上位に位置する。また、少子化は日本共通の課題であり、同県特有の課題とは言いがたい。そこで、県庁からの依頼内容を修正し、「18歳前後での人口の社会減対策」に問題を絞り込んで政策立案を行うことにした。
ステップ2:エビデンス(証拠)を集める
政策立案を行う上では、関連情報を手際よく収集していく必要がある。社会科学研究のように長期間かけて厳密にデータを分析し、新たな真実を発見するというよりも、意思決定において必要な情報を期限内に集めていくことが重要となる。県庁からの依頼にも期限が設定されており、調査に割ける時間には限りがある。
筆者らは県庁にお願いし、県立高校の進学担当の教員を紹介してもらい、ヒアリングを行った。また、その教員の配慮で、生徒からも話を聞くことができた。
進学担当の教員によれば、「県外の大学に進学したい」という生徒の希望が県外進学の一番大きな要素ということであった。さらに掘り下げて質問すると生徒の学びたい学科が県内の大学に存在しないこともあるし、都会の大学に行きたいという憧れもある。県外の大学に行かせたいという家族の意向もあるとのことであった。
また、生徒と話をすると、同県に愛着はあるが、都会の暮らしに憧れがある、県内の大学に進んだあとに、県内に自分が就きたい仕事があるかも不安、ということであった。
ヒアリングで得た情報をもとに、インターネットで同県内の大学の定員や在籍学生数を調べてみると、同県には国立、県立、私立の大学が1校ずつあり、いずれの大学も定員を満たす学生が入学していた。また、どの大学も、卒業後の就職率が極めて高いことをホームページで公表していた。
県内大学の就職率の高さを裏付けるように、同県内の中小企業を訪問すると、最近の人手不足は深刻で、「若者は一人でも多く採用したい」ということであった。一方で、県庁に職員採用の状況を聞くと、必ずしも県内大学からだけ採用ということではなく、「県外で過ごした経験を持っていること、経験の豊富さも評価している」とのことであった。
こうした情報収集の方法について、高校生全体や企業全体からすればごく一部の声であり、印象論が語られているに過ぎないのではないか、もっと客観的な統計データを使うべきではないか、という疑問もあろう。
一方で、米国で教えられる政策立案の「型」では、統計情報や数量データだけを用いて政策立案を行うことは推奨されていない。「文書」やデータに基づく情報と、「人」から得られる情報はどちらも大事で、一方に偏った情報収集は好ましくないとされる。また、「人」に話を聞いて、文書やデータに基づく情報をさらに収集する、ということもできる。
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