米国発「政策立案」スキルが日本でも役立つ理由 「8つのステップ」で考える「地域人口減少」対策

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今回は、県庁が依頼者であるという点を生かし、県立高校の教員や、そこから生徒に話を聞くことができた。当事者や関係者の話を聞くことは単に事実関係を確認するだけでなく、立案しようとしている提案の実現可能性を確認したり、考えられる反論を予想したりする上で重要である。「8つのステップ」では、効果的なインタビューを行うための、アポイントメントの取り付けや当日の質問術まで様々なノウハウが紹介されている。

ステップ3:政策オプションをつくる

収集した情報に基づいて、「18歳前後での人口の社会減対策」に役立つ政策オプションを考える。予算制約や費用対効果などは後ろのステップで検討するため、そうしたことを考慮せずに、この段階では問題定義に対して解決策となりうる政策オプションを複数考える。他の県の取り組みを参考にしてもよいし、他分野で行われている取り組みをヒントにしてもよい。「8つのステップ」では、政府が行うことをリスト化し、参考にできる切り口がないか探せるようにしている。

県庁からの依頼に対しては、18歳で県外に移住する人数を減らす政策オプションと、移住した人が県内に戻ることを促進する政策オプションとして、①県立大学の定員を増加させる、②県外大学に進学した人が県内企業への就職活動を行うことを支援する、の2つを考えた。

政策オプションは細かく設定することもでき、「何人定員を増やすか」なども検討対象となりうる。実際に政策を執行するためには、細かい部分で意思決定が必要なポイントが多数出てくることになる。一方で、今回のように政策の方向性すら決まっていない段階では、ある程度大きなまとまりで検討し、方向性が固まってから細かい点まで議論したほうがよい。

ステップ4:評価基準を選ぶ

評価基準は「政策オプションの実施により予想される成果」の良しあしを判断するために用いるものである。政策の適切性は様々な観点から吟味される必要があり、「予算制約」「合法性」のような明白な基準もあれば、「効率性」のように高ければ高いほうがよいもの、「政治的実現可能性」のように主観的なものもある。

政策立案の目標は、「特段何もしない」という選択肢(=ベースケース)も含めて、複数の政策オプションの中からどれを選択すべきかを検討し、提示することである。人口減少対策では、効率的なのか(費用対効果)、あるいは効果的なのか(人口増加数)という点で政策オプション間の差異があるはずである。まずはこうした観点から分析し、それ以外の評価基準は補足的に検討することにした。

次回は、この「人口減少」対策の政策立案について、ステップ5からステップ8まで、筆者らが何を考え、何をしたのかを紹介する。

鍋島 学 『政策立案の技法 第2版』訳者

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なべしま まなぶ

2007年カリフォルニア大学バークレー校修了(MPP)。同校卒業生とともに『政策立案の技法』を翻訳し、米国発の政策立案スキルの実践・普及に努める。現在は経済産業省電力・ガス取引監視等委員会事務局ネットワーク事業監視課長。

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