子宮頸がんワクチン「男子もタダ」の深刻事情 「HPVによる咽喉がん」増加中、声を失う人も
中咽頭がんは、かつては50歳以上の男性に多く、長年にわたる喫煙やアルコール摂取が原因とされてきた。そのため喫煙人口の減少に伴い患者数も減るかと思われていたが、期待に反して近年、増えつづけている。
しかも、比較的若い世代にも増えていることで、大きな問題となっている。最近では日本人の約5%が、咽頭(喉)からHPVが検出されたとの報告もあるという。そもそもHPVは性交渉経験のある男性の90%以上、女性の80%以上が生涯に一度は感染するとされる、ごく身近なウイルスなのだ(日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会)。
アメリカのHPV関連がん疾患統計(1999〜2015年)でも、2010年頃に子宮頸がんを抜いて中咽頭がんが多くなった。日本でもHPV関連の中咽頭がんが増加を続けていることから、将来的にはアメリカ同様の状況となると予想される。
HPV感染への医学的な対抗手段が、ワクチン接種だ。
誤解招く「子宮頸がん予防」という呼び方
日本では現在、2価ワクチンの「サーバリックス」および4価の「ガーダシル4」、9価の「シルガード9」という3種類のHPVワクチンが接種可能となっている。「価」とは、対応するウイルスの型の数を表している。2価は2種類、9価は9種類ということだ。
2価と4価のワクチンはともに、とくにタチの悪い発がんウイルス「HPV16型」と「HPV18型」に対する成分を含んでいる。いずれも性交渉開始前に接種を受けた場合、7割程度の子宮頸がん予防効果がある。
4価ワクチンには、性器にイボ(尖圭<せんけい>コンジローマ)をつくるウイルス型2種に対する効果もある。また9価ワクチンは、さらに5種類の発がんHPVへの効果があり、子宮頸がん予防効果は9割程度とされる。
陰茎がん、肛門がん、そして中咽頭がんなどの多くは、「16型」が原因となる。上記3種類、いずれのワクチンでも予防効果が見込めるということだ。
だから、HPVワクチンを「子宮頸がん予防ワクチン」と呼び続けることは、厳密には正しくない。誤解によって、陰茎がんや肛門がんなど、HPVによるそのほかのがんの予防機会を失うことになりかねない。
「HPV予防ワクチン」あるいは「HPV関連がん予防ワクチン」と呼ぶべきだ。
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