エクソンモービル「危険な事業戦略」の中身 あまりに厚顔無恥な経営陣は株主にも害だ

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そこで北極圏に関するリポートの出番だ。業界団体である全米石油審議会に対し、米エネルギー省が北極圏での石油掘削について意見を求めた。ところが委員会が提出したリポートによると、北極圏の石油・ガス資源開発が加わることで、気温上昇が2度をはるかに上回る温暖化を招いてしまう。温暖化のスピードは、地球全体の平均よりも北極圏のほうがずっと速い。

今必要なのは、低炭素エネルギーへとシフトすることだ。このテーマは、全米石油審議会の北極圏に関するリポートにとって、時宜にかなったはずだ。

なぜ株主にとっても厄介なのか

エクソンモービルの厚顔さは、株主にとってもかなり厄介に違いない。経営陣は数百億ドルもの巨額の資金を、悪影響が出かねない北極圏の石油・ガス開発に投じようともくろんでいる。再生可能なエネルギーへの移行がグローバルな規模で進んだ結果、すでに原油価格が急落しているのと同様に、今後実施される気候変動対策によって、北極圏での新たな掘削は資源の莫大な浪費となるだろう。

石油・ガス・石炭会社の株式を所有するリスクが高まっていることについて、年金基金や大学、世界中の政府系ファンドが道徳面、財務面の両面から検討を行っている。責任のある投資家はこれら企業に対し、気温上昇を2度以内に抑える制限を順守するための事業計画について、緊急に問いたださねばならない。

北極圏、超深海、カナダのオイルサンドへの投資を盛り込んだ事業計画は、気候変動の緩和を目指す世界にふさわしくない。エクソンモービルの投資家は経営陣に対し、グローバルなニーズおよび政策合意と相いれないビジネス戦略について、緊急に問いたださねばならない。

もし同社が危ないビジネス戦略に固執し続けるなら、投資家は株を売って資金をほかへ移すべきだ。

週刊東洋経済2015年5月16日号

ジェフリー・サックス 米コロンビア大学教授

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Jeffrey D. Sachs

開発経済学が専門。コロンビア大学持続可能な開発センター長。国連事務総長特別顧問としてSDGs(持続可能な開発目標)策定に関与。

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