橋梁流出で廃線、高千穂鉄道「代替路線」の現在 たび重なる災害でバスも運行の確保に苦労する

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川水流から少し進んだ蔵田で、バイパス経由と旧道経由のルートが分かれる。バイパス経由は、延岡ジャンクションから蔵田交差点まで完成している自動車専用の北方延岡道路(九州中央自動車道)に合流。この先は一般道となり歩行者や自転車の通行もできるようになるが、高速運転に適した規格が高い道路である。

一方の旧道は、時に対向車との離合も難しくなるような隘路が続き、川面をすぐそこに見つつ走る。少しでも平らな土地があると、八戸、日之影といった集落がある。

日之影町の現在の人口は3200人余り。それが五ヶ瀬川に面した日之影の集落をはじめ、広い町内に散らばって住んでいる。さらに日之影町の場合、標高差がこれに加わり移動を困難にしてきた。

旧日之影温泉駅
温泉宿泊施設として営業中の旧日之影温泉駅(筆者撮影)

温泉や高千穂鉄道の車両を転用した宿泊施設が今も営業している、元の日之影温泉駅は標高108mほど。これに対し、町のシンボルにもなっている青雲橋のたもとにある、バイパスに面した道の駅は標高230mほどある。そんな高所にも集落が散在しており、徒歩や自転車などでの往来は極めて難しい。

川沿いと高台を結ぶ町営バス

青雲橋自体も川面からの高さは137m。高さ100mを超える道路橋は、日之影町内に大小215基あるそうだ。そのような地形であるから、自家用車の運転ができない層のために、日之影町がコミュニティバス「すまいるバス」を走らせている。

かつては五ヶ瀬川沿いにあった町役場や日之影町国民健康保険病院、あるいは中学校なども、災害の際の対策拠点になるべく、今は水害のおそれがない高台へと移転している。

こうした施設と、宮崎交通の日之影駅前バス停や、日之影町立病院バス停などを結ぶ「循環線」は平日1日9便、土曜日は5便と運転本数が多い。他に、町内の集落と中心地を結ぶ系統も、運転日を決めて隅々まで走り回っている。

青雲橋を渡るたかちほ号
青雲橋を渡る「たかちほ号」(筆者撮影)
すまいるバス
道の駅青雲橋に到着するすまいるバス(筆者撮影)

道の駅青雲橋13時10分発のすまいるバスで日之影温泉駅。さらに日之影温泉駅14時発で日之影町立病院まで乗ってみた。

コミュニティバスは1乗車100円とか、場所によっては無料というところもあるが、日之影町は300円。1日乗車券が500円と比較的、割高だ。急勾配、急曲線が続く悪路を走ってもらえるだけでもありがたいが、車両の傷みも早いであろうし、燃料費も高くつきそう。厳しい山間部の生活を支えている経費と考えると納得する。

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