日野と三菱ふそう「経営統合」、2つの関門の越え方 M&A専門家に聞く、日野の法的リスクへの対処法

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――現在、日野に対するトヨタの出資比率は50.1%、三菱ふそうに対するダイムラー・トラックの出資比率は89.29%です。新会社に対するトヨタとダイムラー・トラックの出資比率を対等とするには、どういった統合スキームが考えられますか。

トヨタとダイムラー・トラックの統合会社への出資比率が同じになるのは、日野と三菱ふそうの株主価値の比率が100対57.1の時だ。両社を統合する方法としては、両社がそれぞれの株主総会の特別決議による承認を経て共同株式移転を行うことが考えられる。

その際、三菱ふそうの価値が(日野の価値を100として)57.1より低いなら、共同株式移転に先立ち、日野の株主価値を下げるか、三菱ふそうの株主価値を上げることが必要になる。たとえば、日野の株主価値を1000億円下げるには日野が銀行から1000億円の新規借り入れをして同金額の自己株買いを行うことなどが考えられる。

日野の従業員の士気を下げないための「上場会社」

――そもそも統合会社が日本でプライム市場に上場する狙いは何でしょうか。

トヨタからしてみれば、上場すれば最終的に日野を売り逃げできるという見方もできるが、そうであれば最初からわざわざ統合会社の出資比率をダイムラー・トラックに合わせなくてもいい。一方、ダイムラー・トラックの視点から見れば、主力市場はヨーロッパとアメリカだ。新しい統合会社はアジア部門でしかない。

そうして考えると、日野の従業員の士気を下げないために統合会社を上場維持するのかもしれない。日本にはいまだ「上場会社」に勤めることへの信仰が厚いからではないか。

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井上 沙耶 東洋経済 記者

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いのうえ さや / Saya Inoue

自動車業界を担当後、現在は専門店やアパレルなど小売業界を担当。大学時代は写真部に所属。趣味は漫画を読むこと、映画のサントラを聴くこと。

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