日野と三菱ふそう「経営統合」、2つの関門の越え方 M&A専門家に聞く、日野の法的リスクへの対処法
経営統合によって、商用車における電動化や自動運転技術の共同開発を進めるとともにアジアでの事業拡大を狙う。ただし、日野は昨年発覚したエンジン不正によって業績が悪化しており、エンジン不正に関連して海外では罰金や損害賠償のリスクも抱えている。
不透明要素が残る中で経営統合を実現できるのか。M&Aに詳しい服部暢達・早稲田大学大学院経営管理研究科客員教授に聞いた。
トヨタによる事実上の「たたき売り」
――日独の大手自動車メーカーが提携し、トラックメーカーの国内2位と3位が経営統合するというニュースをどう見ていますか。
昨年3月に日野がエンジン不正を明らかにした。親会社のトヨタは日野を完全子会社化して立て直すという選択をしなかった。日野を支えきれず、事実上のファイアセール(たたき売り)をしたと認識している。
完全に独立した会社が経営難で身売りする場合、基本合意にこぎ着けるまで時間がかかるのが一般的だ。だが、今回は短期間で経営統合が決まったように見える。世界のトラックメーカーの数が乗用車メーカーに比べて少ないこと。日野も三菱ふそうも双方に議決権の過半数を持つ支配株主がいて、それぞれの株主が意思決定できる構造だったからだろう。
――エンジン不正の影響で日野は国内トラックの一部車種の出荷停止が続いており、業績の先行きが見通せません。加えて、アメリカではエンジン認証での法令違反の調査が続いており、当局から罰金を科されるリスクがあります。さらにアメリカとオーストラリアで消費者から集団訴訟も起こされています。
ダイムラー・トラックの経営陣は直接知らないが、同社が分社化する前の前身であるダイムラー・ベンツ(現メルセデス・ベンツ・グループ)という会社自体、よく知っている。ドイツの中でも優秀な人たちなので、絶対に自ら損を抱え込むようなヘタは打たない。ある程度、日野が抱えるリスクに対応できる見通しがついたことから交渉が妥結したと想像する。
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