プラセボは、実際に体内で生理的な変化をもたらし、痛みの経験を抑制する、という研究もあります。
例えば、ある薬には痛みを減らす効果がある、と信じることで、痛みを緩和する際に体内で自然に作用するエンドルフィン系が活性化される可能性があります。実際に、鎮痛薬を投与されていると信じている人は、痛みに反応する脳や脊髄の領域の活動が低下することが報告されています。
さらに、派手な文字とブランド名のラベルで装飾された高額そうに見える箱に入れられた鎮痛剤を受け取った人は、脳内で同じような反応が示されるのに対し、無地の箱に同じ錠剤を入れてそれにジェネリック医薬品のラベルを貼ったものを受け取った人では、そのような反応が示されないこともわかっています。
これらの研究結果は、プラセボ効果が、少なくとも部分的には、痛みに対する脳の反応を変えることで痛みを軽減することを示唆しています。
マインドセットがホルモン、空腹感、健康に与える影響
プラセボ効果は、薬効に対する期待が、身体や脳の反応を物理的に変化させることを明確に示しています。このように、薬効に関するマインドセットは、実際に私たちの気分を改善することに関係しているのです。ところが、これはマインドセットが身体の生理的反応に影響を与える方法の一つにすぎません。
マインドセットの影響を実証したある研究では、研究参加者は2種類のフレンチバニラミルクシェイクを試飲しました。半数の研究参加者は、はじめに飲むミルクシェイクはダイエット飲料で脂肪や糖分がカットされているので140キロカロリーしか含まれていない、と教示されました。
残り半数の研究参加者は、はじめに飲むミルクシェイクはデザート飲料で脂肪と糖分が多く620キロカロリーが含まれている、と教示されました。1週間後、研究参加者全員は、もう一方のミルクシェイクを試飲することを求められました。
もちろん、実際には2つの飲み物は同じものでした。
研究参加者が試飲した後、研究者は体内のグレリン値を測定しました。グレリンは飢餓感に関係するもので、このホルモンの数値が上がると、空腹感が増すことを意味します。そのため、たくさん食事をした後は、グレリン値が低下するのですが、それは「もう十分に食べましたよ」と身体に教えているのです。
研究者の予想どおり、高カロリー飲料を摂取したと信じた人は、ダイエット飲料を摂取したと信じた人と比べて、グレリン値が約3倍も大幅に低下しました。カロリーを多く摂取したと信じるだけで、身体の生理的な反応が変化して、空腹感が著しく減少したのです。
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