なぜ外資系金融関係者の予想はいつも外れるのか すばらしかった植田日銀総裁に謝罪をしたい

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これには2つ理由があるだろう。

1つは外資系金融機関のポジションである。政策変更からの金利上昇→ドル安円高に賭けてしまっているから、ポジショントークをせざるをえない。しかも最初はポジショントークでやっていたのだが、実現しないとだんだんといら立ってくる。

また同時に、自分の議論はロジックとしては正しいから、自己暗示にかかり「間違うわけがない」と思い、結局予想を外す。その怒りとイライラを日銀のせいにする。あるいは、植田総裁のミステリアスな雰囲気のせいにする。

もう1つは、ポジションを取ってしまっているし、自分のロジックの正しさに酔っていることに起因する。その状況では、日銀関係者がさまざまな形で出す情報のうち、自分の予想と整合的なものだけに目が行く。

あるいは、曖昧でどうにでも解釈できるインタビューの答えを、自分の都合のよいほうに解釈し、それが動かしがたい唯一の解釈のように思い込んでしまう。その結果、予想は外れる。

「確証バイアス」と「自信過剰」の典型例  

そして、この背後には、言い方は悪いが、「日本よりもアメリカのほうが進んでいる、人材のレベルも高い、外資系の俺たちの給料は日系よりも数倍以上高い。だから、こちらのほうが優れているはず」という、やや傲慢な自信過剰も含まれている。

もちろん、私はこれらの事柄を「外資系批判」として述べているのではない。まさに、行動経済学が示唆するところの、第1に「確証バイアス」(自分の予想を裏付ける情報により重きを置く)、第2に「自信過剰」(これがなければ、そもそも投資業界にいることは合理的ではない。ライバルや市場平均には勝てると思っているから、この業界にいるのだ)の2つのバイアスの典型的な例であるからである。

だから、彼らのせいではない。日系のアナリストたちも、環境が変われば、あるいは別の出来事に対する予想に関しては、同じようなバイアスにはまるはずである。

ただ、今回は日本銀行の政策変更というフィールドでの出来事であるだけだ。その場合に、外資系の人々のほうがバイアスにはまりやすい環境にある、というだけである。

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