「超ひも理論」の理解者はパンダより少ない! 天才物理学者・浪速阪教授に聞く<2>
――それ、なんていうアプリですか。
橋本:Mathematicaです。
説明しよう。Mathematicaとは難しい数学の式を解くアプリで、いまでは数学だけでなく気象や金融の最先端でも使われている。なんとあのスティーブ・ジョブズが命名者だ。
橋本:これはまずいな、と思います。僕らの仕事がいらなくなってしまうという危機感がありますね。学生と議論をしていても、「ちょっとそこはMathematicaに聞いてきますので、また明日」という話になることがあります。
仲野:数式を解くという時間のかかる作業を効率化しすぎてますね。
橋本:こういった便利なものに頼りすぎると、Mathematicaでは解けない問題に出合ったときに絶対に困ることになります。解けることがわかっているものはMathematicaに任せてもいいけれど、全部を任せるのは危険です。
仲野:学生がわかっていないのにわかった気になる怖れがありますね。
――仲野先生の分野ではそういうことはないんですか。
仲野:そんなソフィスティケートされた学問ではないので大丈夫です。
――仲野先生、物理学者の前とはいえ自嘲しすぎです。
橋本:でも、データ分析が得意な人が得をするようなことはありませんか。
仲野:要するにですね、僕みたいな人の時代は終わったんです。僕らの時代は誰もビッグデータを扱えなかったけれど、今は、扱える人と扱えない人とがいてて、扱えない人は、ビッグデータがなんらかの処理を経て出てきた結果を信じるしかありません。ただ、処理の方法によって結果は変わりますから、どんな処理をしたのかはわからないとあかんのです。けど、悲しいことにそれができへんのです。
SFの世界がいよいよ現実になりつつある?
テスラ・モーターズの創業者であるイーロン・マスクは過度に発達した人工知能が人間の脅威となる可能性を強く示唆している。映画「ターミネーター」の世界のように、ロボットが人間にはむかう日が来るのではないかと危惧しているのだ。ターミネーターの封切りは1984年。約30年の時を経て、ついにその日がやってくるのかもしれないのだ。かつてのSFが、どんどんと現実になりつつある。
橋本:実はグレッグ・イーガン(SF作家)の作品を読み始めたのですが、専門分野にあまりに近いので、小説を楽しむと言うよりも、論文査読のようになってしまって。
仲野:専門家から見て、あれは正しいんですか。
橋本:微妙に正しそうなんです。でもなかなか読み進められないですね。読めば、ジョージ・ガモフ(理論物理学者)のように新しいアイデアが生まれるのかもしれませんが。
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