「超ひも理論」の理解者はパンダより少ない! 天才物理学者・浪速阪教授に聞く<2>

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――いやいやいや、急にこっちに振らないで。でも、そうなっている以上は仕方ないですよね。

橋本:それは認めざるをえません。

きっと、何百年後には人類の多くが「あの頃は粒とか波とか、それからひもとか言われてもわからないと言っていたらしいね」となると思いますよ。ちょうど相対性理論とか量子論とかが出てきたときはこんな感じだったはずです。

超ひも理論を理解しているのはたったの1000人!

「わかった?」「そちらは?」「いえいえそちらは?」

橋本:その量子論を、今も疑っている人はいます。

仲野:物理学者でもおるんですか。

橋本:はい。そういう分野はちゃんとあるんです。ハイゼンベルグやシュレディンガーが言っていることは実験的には正しいのですが、感覚的には理解できないですよね。なので、どこかに実験では測れていない隠れた変数があるのではないか、それを見ていないからああいった理論が成り立つのではないかと。ただ、その理論に合う実験結果が得られないので、その隠れた変数説は否定されつつあります。

仲野:なら仕方ないですね。負けといてあげましょう。だいだい、超ひも理論を理解してる人は世界にどれくらいいるんですか。

橋本:1000人くらいではないでしょうか。

仲野:たったの!

橋本:世界中のジャイアントパンダの数が1600頭くらいと言われていますが、それより少ないです。

仲野:それを聞いて安心しました。ところで、橋本先生の研究室にはあまり本がありませんね。ふつう、部屋に来た人に見せるためにもっと並べるでしょう。

橋本先生の研究室は部屋も本棚も片付いている

橋本:論文はネットでPDFが読めますし、本は、年に3、4冊読めば十分ですね。

仲野:たしかに、論文誌をパラパラめくることも、目当ての記事の近くにある記事を読むこともなくなりましたね。検索してヒットしたものしか読まなくなったせいで、知性が劣化したような気がしているんですよ。

そうそう、それは常々ボクも思っていたこと。Googleは、ググるためのキーワードを知らないと使えない。でも、本はページをめくるだけで新しい何かとの出会いをもたらしてくれる。その新しい何かとの出会いのきっかけとして最も優れている本は何かというと、辞書・事典の類だ。仲野先生が言ったように目当ての記述の周囲には、調べようとすらしなかった未知がたたずんでいるからだ。

仲野:そのうち、Googleの側が「こんなことに興味持っているのと違いますか」と提案してくるのではないですかねぇ。

――あるでしょうね。

橋本:僕らは研究で数値計算のアプリを使うのですが、これもサジェスチョンをするようになってきています。方程式を入力すると解が出るだけでなく、「次は微分しますか、積分しますか」とアプリが聞いてくるのです。

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