格安スマホが逆襲、大手キャリアの「牙城」に異変 悲観説を覆し、MVNOがシェアを盛り返した理由
第2の理由は、MVNO事業者の数そのものが増えていることだ。総務省によると、2023年3月末時点のMVNO事業者数は1783と、前年比で約1割増えた。5年前から比べると、6割弱も増えている。
ここ1~2年では、堀江貴文氏が自身のファン層向けにプロデュースした「ホリエモバイル」や、SaaS企業のチャットワークによる法人企業向け「チャットワークモバイル」などが業界で話題を呼んだ。
MVNO支援事業も手がけるIIJの矢吹重雄MVNO事業部長によれば、「足元では地方のケーブルテレビ局や、外国人向けに語学学校などが新規参入するケースが目立つ」という。
ここで想定される利用者は、ケーブルテレビを契約する地方の一般消費者や、留学生をはじめとした在日外国人などだ。また、IoT(モノがつながるインターネット)向けにMVNOサービスを提供する事業者も増えている。
こうした新規参入事業者は、すでに特定の顧客基盤やファン層を抱えている点で共通する。レッドオーシャンのようにも映るMVNO市場だが、こうした層に向けて販売を進めて商機をつかもうとする事業者は多いようだ。
第3に、楽天モバイルから離脱したユーザーの流入も挙げられるだろう。ゼロ円プランを廃止すると発表した2022年5月以降、楽天モバイルの契約数は急減。楽天への流出に悩んでいたMVNOからすれば、低価格志向の強いユーザーを再び取り込むチャンスとなった。
キャリアの値下げ合戦は「プラス影響」に?
「ようやくMVNOの認知が広がって市民権を得つつあり、キャリアと対等に戦える段階に入ってきた。今後も拡大基調が続いていくはずだ」。日本通信の福田尚久社長は、そう自信を見せる。
キャリア各社が2021年春に新料金プランの投入で値下げ競争を進めた影響により、モバイル市場の流動性が高まった。その結果、割安なMVNOも選択肢に入れて乗り換え先を考えるユーザーが増えたとみられ、「MVNOにとっては、料金値下げはマイナスのみならずプラスの影響も大きかった」(福田社長)。
自身の牙城に食い込まれた状況に対して、キャリアも無策ではない。6月以降、楽天モバイルとドコモは立て続けに新プランの提供を始めた。さらにポイント還元などを通じて自社経済圏のサービス利用を促し、ユーザーの囲い込みを図ろうと模索している。
料金プラン上、大手キャリアとMVNOの価格差が縮小傾向にある中、料金のみでの訴求には限界があるのも事実。格安スマホや格安SIMと呼ばれることが多いMVNOだが、そうしたイメージを上回る付加価値の構築が課題となる。
冒頭の総務省が示した資料が想定するように、MVNOがMNO3社の寡占を打ち破る競争軸となるためには、多様な事業者がそれぞれ独自性のあるサービス開発を進めていけるかが問われている。
第4のキャリアとして参入した楽天モバイルの失速を尻目に、反転攻勢をかけるMVNO。今後の通信市場のシェア争いは一段と激しくなりそうだ。
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