福島県飯舘村は政府への不満を抱えつつ「全村避難」の準備開始、村紹介の書籍を刊行し支援呼びかけ
福島第一原発事故に関連し、4月22日に政府が「計画的避難地域」に指定した福島県飯舘村は、23日、全村避難に向けた準備に着手した。まず、住民に対する被災証明書の交付手続きを開始。同日だけで約370人の住民に同証明書が交付された。翌24日も、朝9時前から村役場には住民の姿が見られ、9時20分には申請窓口である住民課に15名を超える住民の列ができた。
住民は静かに交付手続きを待っていたが、今の心境を尋ねると、「この先、どうなるのか、皆目見当がつかない」(主婦)といった不安の声が返ってきた。中には、「(枝野官房長官、福山同副長官という)政府関係者が村を訪れて、その後すぐの(避難地域指定)実施。いったい、何しにきたんだ」と、政府に対する不信感をあらわにする住民もいた。
一方、村役場では、避難先の確保に動いている。しかし、区域指定から「約1カ月をメドとする避難」という政府の方針は、きわめて厳しい条件だ。飯舘村では、同村から遠く離れていない福島県内の地域に住民を避難させたい意向で、場所の確保は可能であっても、「仮設住宅の建設までには数カ月はかかる」という。
さらに、避難措置をめぐって、村役場が困惑しているのが避難後の防犯対策だ。住民が留守となったあと、空き巣などの被害が発生するおそれがあるからだ。現に、原発から20キロメートル圏内で外部避難した地域では、空き巣被害が多発している。銀行ATMを破壊し、装填してある現金を奪取する、という犯罪すら少なからず発生している。
菅野典雄・飯舘村長は「健康に十分に配慮したうえで、住民が交代して村に入り、一軒ずつ見回るシステムを作れないだろうか」と言うが、政府の方針によれば、計画的避難地域への立ち入りは厳しく制限されるもようで、村の希望がかなえられるどうかは微妙だろう。
そうした政府の姿勢に対し、菅野村長は「この地域は危ないという一点だけで、あとは何のフォローもない」と苦言を呈する。実際、計画的避難区域の発想が政府内に浮上してから、区域指定までには1カ月ほどの期間があったにもかかわらず、避難先確保などの支援を政府は何も行っていない。