福島県産の桃で「氷結」を作るキリンの覚悟 藤沢烈と駒崎弘樹、「企業×復興」を語る<2>

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駒崎:そういうスピード感のある動きって、おそらく今までの行政のやり方では難しいので、この本にも書かれているように「企業を巻き込む」というのが、すごく重要だと思います。そして企業が僕らNPOセクターと手を組み、溶け合いながら、課題解決に向かっていく。そうしていかないとダメだろうなと。

経済活動の基盤となる「社会」を企業が支える時代

藤沢:震災を機にいろんな企業とお付き合いしたんですが、意識が大きく変わってきたことを感じています。

これまで企業の社会へのかかわり方って、あくまでも経済活動が優先で、「上がった利益の一部を使って、”間接的に”社会活動を支える」という感覚でしたが、そうではなくなってきている。「仕事を通じて、”直接的に”社会に関わる」という発想が出てきています。

経済は安定した社会の上に成り立ちますが、あれだけの災害が起きて、社会自体がぐらぐらと揺らいだ。企業も「社会を支える側にまわらないと、経済活動が成り立たない」ということを肌で感じたんですね。危機感から、企業が社会に対して直接向かい合うようになってきたんだろうと感じています。

駒崎弘樹(こまざき ひろき)●1979年生まれ、慶應義塾大学卒業。2004年にNPO法人フローレンスを設立し、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始。 2010年からは空き住戸を使った「おうち保育園」を展開。現在、厚生労働省「イクメン・プロジェクト」推進委員会座長、内閣府「子ども・子育て会議」委員等を務める。著書は『「社会を変える」を仕事にする ~社会起業家という生き方』(英治出版/ちくま文庫)ほか多数。

駒崎:社会というテーブルの上にある、市場というボードのなかで、自分たちはプレー(経済活動)をしているのに、そのテーブルの部分(社会)を企業はあまり直視していなかったんですね。だから「テーブルが崩れ落ちたらボードも崩れる」という肉薄した危機感のようなものが伝わらなくて、もどかしかったんですけれど。

それが震災を機にようやく理解されてきて、いまはあまりストレスを感じずにお話できるようになってきたし、連携もしやすくなってきました。

いまは、企業のなかのメインストリームの人たちが、そういうことを言い始めているのも面白いですね。以前は担当部署の人だけは意識が高いけれど、メインストリームの人たちはむしろ反対だったりしたんですけれど。

世代という部分も多少あるかもしれないですね。いまの30代辺りは、すごく社会性が強いと思います。うちの寄付会員の方たちも半分くらいは20、30代の方々なんですよ。

社会に対する姿勢のようなものが昔とは違う。昔だったら、「サラリーマンは会社で働いて、納税で社会を支える」みたいな発想でしたよね。

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