福島県産の桃で「氷結」を作るキリンの覚悟 藤沢烈と駒崎弘樹、「企業×復興」を語る<2>

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藤沢:地方に工場を誘致したりするのも簡単ではありません。実は「東北に工場を出したい、なんとか貢献したい」と思っている会社は、意外とあるんですよ。だけど出せないんです。なぜか、わかりますか?

駒崎:いや? わかんないです。

藤沢:人がいないんです。工場で働く人手が集まらないから、進出したくともできないのです。

だから、ただ単純に情報を広めればいいというわけではない。地方になぜ工場が来ないのか? さらにいえば、どうして人が集まらないのか? という根本的な課題を考えなければいけないんです。

駒崎:とくにサービス業関係は、人手がないことが制約になりがちですね。今後、生産年齢人口がどんどん減っていくと、介護の担い手をどうするのかといったシビアな問題がどんどん出てきます。

避難解除で村に帰っても介護の担い手がいない

藤沢 烈(ふじさわ れつ)●一般社団法人RCF復興支援チーム代表理事。1975年生まれ。一橋大学卒業後、マッキンゼー&カンパニーを経て独立。NPOや社会事業に特化したコンサルティング会社を経営。東日本大震災後、RCF復興支援チームを設立し、情報分析や事業創造に取り組む。文部科学省・教育復興支援員も兼務。共著に『ニッポンのジレンマ ぼくらの日本改造論』(朝日新聞出版)などがある。

藤沢:介護の問題は出てきますね。たとえば今福島では、避難地域が解除されて家に戻る人もそれなりにいるんですが、多くは高齢者です。いまはまだ60、70代でお元気ですけれど、これから数年経って体が動かなくなってきたときに介護をできる若い人材がいない。そこが一番の課題なんですね。

社会的にいびつな人口構造をどうするのか? これもやっぱり、今後全国に共通してくる課題です。

駒崎:ちなみに、烈さんはそれをどう乗り越えればいいと思いますか?

藤沢:タブレットPCを配ってオンラインで交流してもらおうという案や、企業に業務委託するなどの取り組みがありますが、「これ」という解決策はまだありません。

僕は釜石(津波被災地)と福島(原発被災地)と両方の支援をやってきたんですが、釜石は比較的回り始めているんですね。どちらも大変な状況ではあるんですが、福島は難しい状況が二重、三重にある。1、2年では解決しないんです。だからこそ支援に入りたいと思うし、多くの人にかかわってほしいと思うんですけれど。

駒崎:そうですね。とにかく「試しては打ち、試しては打ち」というのを積み重ねて、「もしかしたら、これはいけるかも?」という方向を探っていくしかないのかなと思います。

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