激安居酒屋の均一価格は、なぜ崩壊したのか 単に「安い」だけでは、もう勝負できない
「金の蔵Jr」「東京チカラめし」といえば、それぞれ首都圏を中心に一世を風靡した飲食店だ。金の蔵Jrはかつての激安均一価格居酒屋のブームをつくり、東京チカラめしは焼き牛丼という新たなスタイルで牛丼業界に殴り込みをかけた。これらを運営するのが三光マーケティングフーズ。「東方見聞録」「月の雫」「黄金の蔵」などの居酒屋ブランドも持つ外食企業である。
その三光マーケティングフーズが、新しいブランドの居酒屋業態に力を入れている。「アカマル屋」「大衆酒場よろづ」がそれだ。いずれも昔ながらの大衆酒場風の雰囲気やメニューなどがウリで、金の蔵Jrや東京チカラめしの業態転換により出店したケースもある。たとえば2015年1月末にオープンしたアカマル屋の新宿西口店(東京都新宿区)は、東京チカラめしから替わった店舗。大衆酒場よろづ南千住店(東京都荒川区)は、もともと金の蔵Jrを2014年11月末にリニューアルした店舗だ。
大衆酒場よろづ南千住店を覗くと、金の蔵Jr時代の特徴の一つだった各テーブルに備えられタッチパネル操作で料理やドリンクをオーダーできる端末がなくなっていた。「お客さまとの対話を重視して、地域に根ざすことを意識している」(三光マーケティングフーズ広報)という。金の蔵Jr、東京チカラメシともに業態として苦戦気味だったことが、新しい業態開発の裏側にありそうだ。
「270円均一」が大フィーバーした時期もあったが…
このうち金の蔵Jrはもともとリーズナブルな居酒屋業態でスタートし、デフレの進行に併せるようにどんどんメニューの価格を下げ、リーマンショック後に打ち出した「270円均一」が最安。これが不況期の節約志向で人気を博したのを見て、コロワイドの「うまいもん酒場 えこひいき」、モンテローザの「268円厨房 うちくる」など、大手チェーンをはじめとする競合他社が次々と追随し、300円前後の均一居酒屋があっという間に増えた。5年ほど前は繁華街に「●●円均一」の看板があふれていた。客単価が2000円前後に抑えられた激安均一価格居酒屋は、時代背景にマッチした業態だったのだ。
ところが、今になってみるとどうだろう。近ごろはすっかり街で「●●円均一」の看板を見る機会が減った。完全になくなったワケではないものの、かつて激安均一価格をうたっていたチェーン店はその看板を次々と下ろしてしまっている。この点、関係した企業としてはあまり触れられたくないのかもしれない。コロワイドに取材を打診したところ、「辞退させていただきます」(総務部グループ広報)とけんもほろろだった。
では理由は何だろうか。
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