激安居酒屋の均一価格は、なぜ崩壊したのか

単に「安い」だけでは、もう勝負できない

客観的に考えてみよう。マクロ環境を見ると、金融緩和による円安、株高を手段としてデフレからの脱却を目指す政策であるアベノミクスの影響が及んだことが、要素の一つであることは間違いないだろう。円安によって原材料高が進み、激安価格では消費者が満足するような品質のメニューを提供できなくなった。デフレに乗っかった値下げ競争が、あだとなった。

消費者自身の嗜好や競争環境の変化もある。2011年の東日本大震災以降、食事やお酒を楽しむ際にはとにかく安さを求める層と、付加価値を求める層に二分化された。一方で、コンビニエンストアの弁当をはじめとする中食のクオリティが改善。ファミリーレストランもちょい飲み需要の獲得に工夫を凝らした。「軽く食事をする、軽く飲む」という需要は、さらに安く済ませられるコンビニやファミレスへ流れ、激安均一価格居酒屋の役割は中途半端なものになった。

「280円均一」でも成長を続けるコツ

しかし、すべての激安均一価格居酒屋が失敗したわけではない。280円均一(税抜き)の焼き鳥専門店「鳥貴族」を展開する鳥貴族は、2014年7月にジャスダックに上場。ここ数年も右肩上がりの成長を続けている。

独自の立ち位置を築いた「鳥貴族」(撮影:大塚 一仁)

鳥貴族と、その他の均一居酒屋との大きな違いは何か。鳥貴族は、チェーン居酒屋を競合と捉えず、コンビニや中食のマーケットを常に意識している。

そもそもまだ100円ショップも存在しないころから、均一価格で展開をスタート。総合的な居酒屋業態と違い、鳥貴族のような専門業態は扱う食材が限られるため、スケールメリットを出しやすく、厨房のスペースを抑えられ、スタッフの習熟度も高めやすい。顧客側も「焼き鳥を食べたい」という目的意識を持って来店しやすいという点もある。

メニューの7割を250円、3割を500円で2010年から展開したワタミの「仰天酒場 わっしょい2」を例に取れば、均一価格は事実上やめ、付加価値の高い商品の提供を目指す新業態「旨い屋」に転換した。現在、東京都内で7店舗運営している。ワタミグループとしても「目的型の来店動機が強まってきており、専門性を持った業態を増やしていくことが必要と考えている」(ワタミ広報)という問題認識がある。

居酒屋はもはや単に「安い」だけでは勝負できない。より専門的なニーズに応えたり、訪れる楽しさを提供したりなどの付加価値をいかに高められるかが、カギになってきている。

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