サントリー「ハイボールサーバー」の深謀遠慮《それゆけ!カナモリさん》

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■ハイボールサーバーの真の狙いとは

 4月20日付日経MJのコラム「食を支える」に「サントリー ハイボールサーバー 5銘柄、最適な割方で」という記事が掲載された。5銘柄とは、角瓶、山崎、ザ・マッカラン・ファインオーク12年、ジャック・ダニエル、白州。それらをウイスキーとソーダ1:4、1:3、1:3.5などの最適比率で自動的に作り出すサーバーを開発したという。ソーダもただ者ではない。サーバーの冷却機能を高めることで、「おいしさのカギをにぎる、ウイスキーと割る炭酸の量を増し、液体に含まれる炭酸密度を従来の5.3から6.0まで高めた」(記事より)という。そして、サントリーは「6.0は現時点で最高レベル」であるとコメントしている。

よーく冷やして、喉ごしのよさを味わってもらうという手法は、考えてみればビールとよく似ている。酒好き、ウイスキー好きにとっては、熱い塊となって喉から食道を通って胃の腑に滑り落ちるウイスキーの感触が何ともよいのだが(←書きながら禁酒中の筆者は思わず感触を思い出し悶絶している)、やっとハイボールでウイスキーに慣れた初心者にはまずは喉ごしだ。

アサヒビールの「スーパードライ エクストラコールド・バー」をおぼえているだろうか。2010年5月21日に東京・銀座にオープンし、連日行列を作った店だ。人気のヒミツは、「氷点下の温度帯(-2℃から0℃)のアサヒスーパードライを飲める」ということ。ビール愛好家にとっては味がわからないくらいにキンキンに冷やしすぎはNGだ。喉ごしと共に鼻腔に広がる香り(←再び悶絶)が楽しめなくなるからだ。しかし、アサヒの狙いは「若者のビール離れ対策」であった。故に、「エクストラコールド」を開発し、少々狭すぎる店に行列を作らせ人気を醸成し、アンテナショップとしての役割を終えた同店を閉めてから、専用サーバーを各料飲店に広めていったのだ。現在では「エクストラコールド」を楽しめる店は順次増えている。

サントリーの場合、超高性能サーバーの展開は、「サントリーがハイボールにあうフードメニューや店舗デザインの企画、従業員の教育まで」(同)請け負った店だという。そして、サントリーはその店舗から、「フランチャイズチェーン(FC)と違い加盟店料やロイヤルティーなどは一切とらない」という太っ腹具合である。そのワケはとりもなおさず、目的を収益ではなく、角瓶だけでなく他の銘柄のウイスキーを消費者に体験させ、拡販することに置いているからだろう。

 

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