「ドル安=円高」なのか?中銀ウイーク前の現在地 「ドル指数100割れ」にざわめく市場の盲点

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BISの名目実効相場でG3通貨(ドル、円、ユーロ)の動きを年初から比較すると、ユーロ相場は確かに一強状態だが、ドル相場は極端に弱っているわけではなく、円の独歩安という印象だけが残る。

BIS名目実効指数

もっとも、本稿執筆時点ではBISの名目実効相場はまだ7月10日時点までしか公表されていない。ICEのドルインデックスが7月10日から14日にかけて急落していることに鑑みれば、BISのドル名目実効相場も類似の動きをしていたのかどうかは確認する価値がある。

しかし、仮に、ICEのドルインデックス急落の背景がFRBとECBの金融政策格差だとすれば、6割弱がユーロの動きに依存するICEのドルインデックスと異なり、BISのドル名目実効相場はそこまで下落していない可能性もある。

FRBは7月にハト派に転じるのか

いずれにせよ本格的なドル安転換を判断するにはNEERの動きまでチェックしたい。指数によって示唆する程度の差はあるが、現時点でドル安圧力が強まっているのは確かだろう。それはFRBの利上げ停止に賭けた動きと考えられる。

しかし、7月のFOMC(連邦公開市場委員会)があえてハト派的な情報発信を強める理由もなく、最近のドル売りにはやや性急さを感じざるをえない。

何より、過去の寄稿を通じて円安の背景を日本の需給構造の変化に求めてきた筆者の立場からすれば、FRBが利上げを止めたり、利下げに転じたりすることが、そうした構造的な円安圧力を緩和することに何の影響も持たないことは強調しておきたい。

そのように考えるとドル円相場が米金利主導で押し下げられる局面では、淡々と押し目を拾う姿勢が長い目で見れば報われるのではないかと考えたい。

唐鎌 大輔 みずほ銀行 チーフマーケット・エコノミスト

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からかま・だいすけ / Daisuke Karakama

2004年慶応義塾大学経済学部卒。JETRO、日本経済研究センター、欧州委員会経済金融総局(ベルギー)を経て2008年よりみずほコーポレート銀行(現みずほ銀行)。著書に『弱い円の正体 仮面の黒字国・日本』(日経BP社、2024年7月)、『「強い円」はどこへ行ったのか』(日経BP社、2022年9月)、『アフター・メルケル 「最強」の次にあるもの』(日経BP社、2021年12月)、『ECB 欧州中央銀行: 組織、戦略から銀行監督まで』(東洋経済新報社、2017年11月)、『欧州リスク: 日本化・円化・日銀化』(東洋経済新報社、2014年7月)、など。TV出演:テレビ東京『モーニングサテライト』など。note「唐鎌Labo」にて今、最も重要と考えるテーマを情報発信中。

※東洋経済オンラインのコラムはあくまでも筆者の見解であり、所属組織とは無関係です。

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