ベストレストラン50「ペルーの店」が1位の"意味" 「セントラル」の実力は?東京・永田町に姉妹店も
2010年代初頭には、ブラジルの「D.O.M.」(アレックス・アタラ氏)や、ペルーの「アストリッド・イ・ガストン」(ガストン・アクリオ氏)などがすでに注目されていた。
アタラ氏はアマゾンの食材を用いてブラジルのテロワールを表現する料理で世界に名を馳せ、アクリオ氏はテレビ番組や著作などで現代ペルー料理を広め、現地学生のために学費の安い調理師学校を設立するなど、美食の枠をこえて人々に希望や誇りを与えた。
2人とも現地の知名度は非常に高く、アクリオ氏にいたっては、一時は次期大統領候補と目されたほどだ。
そこから10年を経て今回「セントラル」が1位となった背景には、彼らをはじめとするこれまでの南米ガストロノミーの先達たちの実績があった。
異分野の視座を取り込む
「セントラル」の最もユニークな点は、レストランという経済活動と、自国の食文化の調査・保存・伝承の活動を両立させている点にある。
「食と文化に関する知識を管理しながら、その発見を誰もが利用できること」を目的に、国内のさまざまな場所で調査を行い、そこで得られた知識を保存し、伝えている。ここでは、レストランで料理を提供することもその研究や発信の延長上にある。
「セントラル」にかつて学術調査のため在籍していた日本人がいる。文化人類学者の藤田周さんだ。藤田さんは「セントラル」や「マテル・イニシアティバ」で、異質な文化・社会を体感的に理解するフィールドワークを2018年から約2年間行ってきた。
古典的な人類学のフィールドワーカーが村に住み込んでその文化を学ぶのと同じように、キッチンで料理人として働く、例えばまかないの野菜を刻むことから新しい料理の試作まで、さまざまな仕事を料理人とともに行うことで、彼らの思考や実践のあり方を探求してきたという。
「私にとって印象的だったのは、アマゾンから持ってきた食材を囲んで、料理人と、マテル・イニシアティバのデザイナー、写真家、人類学者がその食材で何ができるかについて議論をしていたことでした。
そこには、料理の枠組みにとらわれず、異分野の視座を取り込むことでレストランを作っていこうとする『セントラル』の姿勢が、端的に表れていたように思います」
ペルーは、トマトやジャガイモなど、現代の料理で欠かせない多くの食材の発祥の地だ。セントラルでは、地元の人とともにそれらの原種を育て、その収穫物を分かち合っているという。
レストランが、食を通して人々に何かを伝えるために、異分野のアイデアや知識を取り込む。そのスタイルに、今後のレストランのあり方のヒントがあるのかもしれない。
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら