ベストレストラン50「ペルーの店」が1位の"意味" 「セントラル」の実力は?東京・永田町に姉妹店も

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ちなみに、「セントラル」は日本に姉妹店がある。2022年7月に開業した東京・永田町の「マス」だ。

ゲストの多くがペルーに馴染みのない東京で、遠く離れたペルーの自然の豊かさを伝える。料理は「セントラル」のコピーではなく、日本食材を用いて、ペルーの生態系を9つの高度ごとに9皿の料理で表現するという野心的な試みが好評を得ている。

シェフはベネズエラ出身のサンティアゴ・フェルナンデス氏。マルティネス氏の右腕として、「セントラル」に6年間勤務していた人物だ。

「セントラル」の世界1位は、昨年、一昨年の結果を見れば、ある程度予想できたことではあった。2021年は世界4位、2022年は2位。今年の1位は順当な結果といえる。にもかかわらず、今回大きな話題となったのはなぜか。

レストランに求められる社会的な役割

理由のひとつは、ラテンアメリカから初の世界1位となったことだ。

これまでの世界1位は「エル・ブリ」(スペイン)、「オステリア・フランチェスカーナ」(イタリア)、「フレンチ・ランドリー」(アメリカ)など、欧州あるいはアメリカの店だった。

そしてそのスタイルも、欧州の伝統的な高級レストランのスタイルに則っていた。「セントラル」はそのようなスタイルを取らない、小さな国の家族経営の独立レストランだ。

「セントラル」内観(写真:セントラル提供)

もう一つの理由としては、レストランとしての「セントラル」のユニークなあり方に共感した投票者が多かったことによるのではないだろうか。

近年のレストランは単に美食を提供するだけでなく、社会的役割を求められる機会が増えている。魚介類をはじめとした食材の持続可能性や食品ロスを意識できているかが問われ、また、シェフが貧困などの社会問題に食を通して関わる例も増え、良い影響をもたらす役割が期待されるようになった。

「評価するのは皿の上だけ」といわれるミシュランガイドでも、数年前から「グリーンスター(持続可能な発展に配慮したレストラン)」というカテゴリーを星とは別に設定、顕彰している。レストランは社会に影響を与えうる存在である、そのことに自覚的かどうかが問われる時代になったのだ。

「エル・ブリ」が1990年代から行った革命ともいうべき新しい調理技術の導入以降、世界の料理界は新しい味を求め続けてきた。その表れがデンマークの「ノーマ」をはじめとする新北欧料理であり、「その次」と目されてきたのが南米だった。

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