仕事で成果出す人が実践「良い仮説」サッと作る技 短時間でできる「ヒューリスティック」とは?

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私が現在行っているビジネスのメイン顧客はSaaS(Software as a Service:ソフトウェアをインターネット経由でサービスとして提供している)企業です。

SaaS企業は月額課金モデルが多く、何年間か継続利用してもらわなければコストが回収できません。そのため、Churn(チャーン:解約)されないことが重要で、反対に継続してもらえばもらうほど初期にかけたマーケティングコスト、営業コストに対して利益率が上がっていき、さらに利用拡大してもらうことで1社から得られる収益も増えていきます。

これらは私がSaaS企業のビジネスモデルについて過去の経験から知っていることの一部で、これから商談する目の前の顧客に必ずしも当てはまるとは限りませんし、先入観があります。

しかし、この経験をもとに仮説を立てるのには時間がかかりません。

1.この顧客もSaaSビジネスなのでChurnされないことを重視しているはず。
2.この顧客のChurn Rate(解約率)はどのくらいなんだろう? 競合と比べ高いだろうか?
3.高いとすると、何が悪いのだろう? ここに課題があるかもしれない。Churn Rateを下げるための取り組みはどんなことをしているんだろう?
4.Churn Rateが低い場合は、受注後の顧客対応や受注時の期待値調整にしっかり取り組んでいるのかな。受注時の期待値調整でリスクを抑えるほうに傾きすぎていて、本来はもっと受注できる顧客からの新規契約を取りこぼしていることはないだろうか? 新規受注率はどれくらいなんだろうか?
5.新規受注率も高いとすると、もっと商談数を増やせば受注も増えるんじゃないかな? 営業を増やしたほうがいいのかな? その場合必要なリード数も確保できるかな。

というように、経験から仮説が一瞬で生まれます。この仮説は正しいとは限らないので、事前に調べたり、商談中に顧客に質問したりして検証する必要がありますが、何も手がかりがないところから調べていくのと比べると、かかる時間はずいぶん減らせます。

仮説は間違っていてもいい

そして、仮説は間違ってもいいので、「顧客がChurnされないことを重視」していなくてもいいのです。もし仮説と違い、「SaaSなのにChurn されないことを重視していない」とすれば、そこに違和感が生まれます。違和感の理由がどこにあるのかを深掘りしていくと、この顧客と他のSaaS企業との違いが浮き彫りになり、新たな仮説が生まれます。

また、その違いは新たなケースとして自分の中の経験則になり、今後の商談で使えるヒューリスティックとして蓄えられていきます。

営業経験が浅い人は、私がSaaSビジネスを知っているからヒューリスティックで仮説が作れると思うかもしれません。そして、そうした経験がないとヒューリスティックは使えないと思うかもしれませんが、それは違います。

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