新NISAも「インデックスファンド」だけで十分だ 金融機関の巧みな「営業」に乗ってはいけない

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S&P500のインデックスファンドがはやっていることもあり、アメリカの大型株運用で考えてみよう。S&P500は同国の代表的な大型株500社によって構成され、原則として時価総額加重ウェートの株価指数だ。

同国の大型株を対象とするアクティブ運用は、S&P500をベンチマークとし、(主に)その採用銘柄を組み入れ対象銘柄として、ファンドマネージャーが有望と思う銘柄をベンチマークのウェートに対してオーバーウェートする。一方、ダメだと思う銘柄はアンダーウェートすることによって、投資を行う。

仮に、アップル株がS&P500のちょうど6%を占めているとしよう(現実には、もう少し大きい)。同社株式への投資を有望と思えば、運用者はファンドの7%、8%……とオーバーウェートするし、株価が割高だなどと思うと5%、4%……とアンダーウェートする。そして、アクティブ運用者のアップル株保有の合計ウェートは全体の6%になっている。

同様のことを残りの499銘柄に対しても行うのが、「S&P500をユニバース(組み入れ対象銘柄群)かつベンチマークとして行うアクティブ運用」だ。これ以上でも、以下でもない。そして、個々の銘柄の投資ウェートを変更する際に、アクティブ投資家同士は売買を行う。そして、売買は、発注形態がどのような形で行われるにせよ、手数料コストを要する。

「平均投資家」なら売買が不必要

一方、アップル株を市場の平均並みに6%保有し(これはアクティブ投資家の平均でもある)、その他の499銘柄も平均のウェートで投資する「平均投資家」は、S&P500の銘柄入れ替えが発生しない限り、売買の必要がない。

純粋な運用の有利不利として、「平均投資家」は、アクティブ投資家の合計に対して、彼らが支払う売買コストの分だけ必ず勝てる構造になっている。アクティブ投資家は、あたかも、数字が500個並んでいるカジノのルーレット台にかじりついていて、オーバーウェート/アンダーウェートを変更するたびにチップを並べるギャンブラーのようなゲームをしている。

最終ページに競馬の予想を書いているこのコラムで述べるのは気が引けるが、ギャンブラーは長期的には負ける。長く、多くの回数を賭けるほど、確実に負ける。それは、ギャンブル主催者の取る手数料(「テラ銭」などと呼ばれる)があるからだ。アクティブ運用のゲームでは、アクティブ投資家同士の売買コストがテラ銭の役割を果たしている。

このようにゲームの構造を見ると、アクティブファンドの運用者は、いくらか自制心の弱い、つまりそれほど賢くない自信過剰のギャンブラーに見えてくる。株式ポートフォリオのアクティブ運用が、昔自分が熱心に取り組んだ職業であることを思うと、個人的には少し残念だ。

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