大谷翔平の名言「憧れるのやめましょう」の舞台裏 WBCで日本代表監督を務めた栗山英樹が振り返る

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調子そのものは上がりきっていないけれど、前夜のサヨナラ打は間違いなく好転のきっかけになります。彼にとってベストの起用法は4番に戻すことなのか、それとも5番のままなのか。深夜まで答えは出ず、ベッドに入っても煩悶は続きます。

答えが出たのは翌朝に目が覚めて、脳がすっきりしたときでした。第4章でふれた渋沢栄一さんの「成功と失敗は、心を込めて努力した人の身体に残るカスのようなもの」という言葉から、今回のWBCでの成功は気にしなくてもいいのだろうと考えました。

そのうえで、「大善は非情に似たり」の姿勢を取るべきだと決めました。4番に戻すよりも悔しい思いをさせたままのほうが、村上宗隆という選手にとって将来的にプラスになる、と考えました。

4番から5番へ落としたときはLINEで通話をしましたが、今回はメールで「このまま5番でいきます。ムネに宿題を残します」と伝えました。

決勝戦で活躍をすることになっても、「4番ではなく5番だった」という事実が残ります。残された宿題は、成長への糧になる。「終わり良ければすべて良し」と言われることがありますが、たとえば入社したばかりの社員や成長過程のスポーツ選手には、次の仕事や大会につながる宿題を、つまり課題を与えていいのでしょう。

それは、成長の養分です。

慎独

打順は決まりました。次は投手です。先発は今永とし、細かく継投していきます。現在の調子から考えて、投げてもらう順番を決めました。

あとは、翔平とダルです。

翔平については、2日前の会話で必ずいくと信じていました。

ダルについては、待つしかありません。

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