「ゲーム依存の子」無理にやめさせることの大弊害 「ゲームは悪」と決めつけず親子で向き合うには

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「特に思春期には、学校や友人関係、進学、就職、家族との関係など、ストレスが山積している場合があります。一方でゲームによって発散できたり、自己表現ができると、子どもにとってそこは安全地帯となるのです。 

ゲームの問題だけを解決しても、現実世界の問題を解決しなければ改善には向かいません。まずは子どもがゲームの世界にのめり込む理由を理解する必要があります」 

「ゲームは悪だ」は本質的な問題に蓋をする 

ゲームは、努力しただけ成果が出やすい。成果を出せばメダルがもらえたり、キャラクターや仲間から喝采されたりといったご褒美がある。現実ではなかなか味わえない達成感が得られるのだ。この高揚感に依存してしまうのは無理のないことだろう。 

しかし単純に「ゲームは悪だ」としてしまうのは、本質的な問題に蓋をしてしまうことだという。 

「ゲーム依存、ゲーム障害などいろいろな呼び方がありますが、近年医学界ではゲーム症やゲーム行動症と呼び、名称が統一されてきています。しかしゲームに没頭して寝食を忘れたり、学校や仕事に行かないなど日常生活が送れなくなり、『ゲーム症』と診断される事例は非常に少ないです。 

そしてゲーム症の診断をつけなくても、我々は援助を行うことができますし、そう診断をつけることに、現状あまりメリットを感じません。特有の治療法が確立されているわけではないですし、ゲームをしなくなる治療薬があるわけでもない。 

例えば発達障害は、診断を下さなくても療育などの支援を受けることはできますが、自分の得意不得意を理解するのに役に立つことがありますし、ADHDでは薬物治療の適応になることもあります。 

でもゲーム依存症の場合、『自分はゲーム依存症だったんだ』と理解しても、すごく生きやすくなるわけではありません。患者さんやその家族の目的は、病名を知ることではなく、症状がよくなることや、本人にとって過ごしやすい生活を送れることのはずです。大事なのはゲームを完全にやめさせることではなく、本人が使用をコントロールすることです。学校や職場、家族との関係を改善したり、ゲーム以外の楽しみを探してゲームの優先度を下げることが、解決の一助になります」 

気持ちが弱っているときには、救いが必要になるもの。もしかしたらゲームで未知の世界に冒険に出たり、可愛い動物と触れ合ったりすることが心の慰めになっているのかもしれない。安易にゲームを取り上げてしまうのは、より心を傷つけることになってしまう。 

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