歴史的演説!首相を支えた10のプレゼン技術 それは入念に計算されたスピーチだった

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1. 笑顔

印象に残ったのは、余裕のある(ように見える)笑顔だ。この「笑顔」。実は日本人はあまり得意ではない。日本人のトップやエグゼクティブの中には、プレゼンやスピーチの場で「笑顔を見せたら負け」と言わんばかりに、しかめっ面を続ける人が多い。しかし、日米の友好を印象付けたいこのスピーチでは、「相手を受け入れます」というメッセージを伝える笑顔は非常に重要な意味合いを持っていた。ところどころにちりばめられた笑顔が、会場の雰囲気を和やかなものにしたといえるだろう。

2. ユーモア

要所要所に笑いを誘うエピソードが盛り込まれていた。表現法や英語の発音等で、完全には伝わっておらず、すべてがウケたわけではないが、折々に会場から笑いがもれていた。

学生時代にカリフォルニアでホームステイした先の未亡人が「私の夫はゲイリー・クーパーよりハンサムだったのよ」と言っていたエピソードに触れ、「私のことを客席にいる妻は何というだろう、怖くて聞けない」などと自虐的に言ってみせた。

この「自虐(self-deprecating)ネタ」はアメリカのユーモアの「鉄板ネタ」。そもそも、「ユーモア」はプレゼンスキルの中でももっとも難易度が高いものだが、あえて盛り込んだところに、深謀遠慮がうかがえる。

3. 個人的なエピソード

日本人に多いのが、とにかくオフィシャルトークに終始した無味乾燥なスピーチ。個人的な思い出やエピソードは無駄とばかりに、建前論を展開するものが多い。

そんな中で、今回は安倍首相の個人的な思い出話がふんだんに織り込まれた。アメリカ人はこうした「ストーリー」が大好きだ。前述の未亡人のイタリア料理が美味しかったこと、アメリカの文化の多様性、メリトクラシー(能力主義)を肌身で感じたこと、第二次大戦メモリアルを訪ね、心を打たれたこと、などが自分の体験として第一人称で語られた。

I gasped with surprise (驚きで息をのんだ)、I was much younger, and like a ball of fire (私はもっと若くて、火の玉のように熱い志を持って・・)など、日本では「芝居がかった」「うさんくさい」と批判的にみられることもある叙情的な表現も、アメリカでは当たり前。聴衆も話し手をぐっと身近に感じることができる。

4. ジェスチャー

日本人にとって最大の難関はこのジェスチャー。話し手の印象を決定づける非常に重要な要素だが、どうしていいかわからないと戸惑う人は多い。特に手のやり場。今回の安倍首相は、欧米の政治家ほどに、ジェスチャーを駆使していたわけではなく、ぎこちなさも目立ったが、場面場面で、意図的にジェスチャーを織り込んでいた。どのジェスチャーも、普通の日本人であれば、まず自然には出てこないジェスチャーであり、事前に準備していたか、練習していたと思われる節がある。

特によく使われたのが2つ。一つ目は胸に手を当てるジェスチャー。自分の心に刺さった、深く心に残った、という気持ちをより強調するもので、「自分に言い聞かせました」「私が先陣を切りました」「私の胸によぎりました」といった場面で使われた。

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