切り替えた科目では、数学が最も多く、外国語やハードサイエンス(化学や生物学)が続く。無料でいつでも利用できるという点は、確かに圧倒的な競争力といえるだろう。
勉強といえば学校で行うものというのが多くの人の考え方だが、昔からそうであったわけではない。ヨーロッパの伝統的な社会では、貴族社会における教育は学校ではなく、個別のチューターによって行われていた。
チューター制度は、イギリスのオックスフォードやケンブリッジなどの大学に引き継がれている。学生は、わからないことをチューターに相談する。理解度は個人によって異なるため、個別の指導が好ましいことは間違いない。また、アメリカの大学院ではTA(教員助手)という制度が広く展開されている。
チューター制度の問題点はコストがかかることだが、ChatGPTがそれを解決した。
学校を置き換えるのではなく、家庭教師を置き換える
学校は、単に知識を学ぶだけでなく、集団生活を経験し、友人を作るために極めて重要な役割を果たしている。したがって、現代社会において、学校がまったくなくなってしまうようなことは考えられない。
しかし、知識習得の相当部分が、ChatGPTによるチューターによって置き換えられる事態は、十分にあり得ることだ。
つまり、ChatGPTは教育過程そのものを置き換えるのではなく、それを補完するものとして存在し得る。これまでの学校教育の良さはそのままにし、これまでチューターが行っていた家庭教師の役割を果たし得るのではないだろうか。
あるいは、これまでチューターが利用できなかった人に対して、チューターの役割を果たすことがあるだろう。社会人の場合には、こうしたケースが多いだろう。
ChatGPTによる学習の最も大きな特徴は柔軟性だ。いつでも学習を行うことができる。朝早くでも、真夜中であっても構わない。また、学習内容を自由に変更することも可能だ。理解できないことがあれば、質問の仕方を変えて理解するまで説明を求めることができる。数学や統計学などのハードサイエンスにおいては、このような学習が可能であることは大きな利点だ。
貧困のために進学できない子供たちは、開発途上国には依然として多い。これらの子供たちが自ら独学によって学ぶ可能性が広がることは、非常に重要な意味をもつだろう。
先進国でも丁寧な教育サービスを受けることのできぬ子供たちが多数存在している。これまでは裕福な家庭の子供たちのみが利用できた個別指導が、貧しい家庭の子供たちにも無償で利用できるのは、極めて重要な変化だ。
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