ついに薬局で買える「緊急避妊薬」どうなる? 性交渉後72時間以内の服用で「妊娠を回避」

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私のアフターピルの処方経験から、診療申し込みは、土曜や日曜が多い。週末に性交渉をする人が多いからだ。ナビタスクリニックは週末も診療を行っているが、土日が休診の医療機関は少なくない。日曜をまたいで月曜に医療機関を受診し、薬をもらうとなると、性交渉から服用まで24時間以上空いてしまいかねない。最も効果的な服用タイミングを逃してしまうことになる。

こうした問題点を改善するために薬局で販売する、というのが今回の仕組みらしい。

ピルを定期的に服用するのが理想

アフターピルが簡単に手に入りさえすればいい、というものではない。もちろん、「アフターピルが普及すると、女性が淫らになる」といった馬鹿げた偏見からではない(そんなことを真顔で言う人たちもいるのが日本の現実なのだが)。アフターピルでの妊娠阻止率は完璧ではなく、もし妊娠が継続した場合のことまで考えても、文字通り“緊急”時以外は安易にお勧めできないからだ。

日常的な避妊には、ほかの手段をお勧めする。定期的に性交渉するパートナーのいる女性では、望まない妊娠を避けるためにも、低用量ピル(いわゆる「ピル」)の服用が望ましい。ピルは、世界的には経口避妊薬(Oral Contraceptives; OC)と呼ばれる。日本では、避妊効果を検証したうえで当局の製造販売承認を得ていないので、避妊を効能として謳うことができない。

日本では、ピルは月経困難症や子宮内膜症の治療薬として保険診療で処方可能なものと、保険適用外の自費診療となるものとに分けられる。現在世界的に使われているピルは、プロゲストーゲン(黄体ホルモン)とエチニルエストラジオール(合成エストロゲン=合成卵胞ホルモン)との合剤か、プロゲストーゲン単剤である。

エチニルエストラジオールの量によって、中用量、低用量、極低用量ピルと分類される。プロゲステロン単剤のピルはミニピルとも呼ばれる。イギリス国民保健サービス(NHS)の避妊に関するサイトには、いずれのピルも避妊効果があると記載されている。服用開始の目安は、身長の伸びが止まれば、いつ開始してもよい。

ピルには副次的な効果もある。アメリカ皮膚科学会ニキビ治療ガイドラインには、ピルが科学的根拠の高いニキビ治療法の1つとして記載されている。子宮内膜症を予防したり、改善したりする効果もある。がんの予防効果も知られており、子宮内膜がん(子宮体がん)を30%程度、卵巣がんを30〜50%、大腸がんを15〜20%減少させる。

やや極端な言い方をすると、ピルを服用できない理由がある人以外は、ピルを服用したほうが健康でいられる、ということだ。

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