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「反戦」の弱い指導者から「領土解放戦争」の象徴へ ゼレンスキー大統領の変貌とウクライナの課題

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それでもゼレンスキーによるドンバス和平の模索は続いた。2020年7月、ウクライナ国防省情報総局(GUR)とSBUが数年かけて準備・実行した「民間軍事会社ワグネル」兵士捕獲作戦は、ゼレンスキー側近がロシアとの和平交渉へ与えうる影響に配慮して作戦を1週間延期したことで計画が露見して失敗した。

交渉は膠着し、ゼレンスキーの対露政策は、前政権と似かよったものになっていく。そして昨年2月の政権転覆の試みを目の当たりにして、ゼレンスキーは、プーチンの目標は、そもそもドンバス紛争の解決ではなく、ウクライナの属国化だと最終的確証を得たのである。

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一方、プーチンの誤算は、「弱い」ゼレンスキーが、キーウを離れることなく、国民に祖国防衛を、欧米諸国に武器供与を呼びかけたことであった。

反転攻勢と選挙の行方

ロシアでは来年3月に形式的な大統領選がある。ロシア大統領府は、プーチン出馬を前提にさまざまなシナリオの検討を始めており、今年9月にある地方選で国内向けスローガンをテストするとみられる。プリゴジンの反乱を受け、国内の引き締めを一層強化し、「内戦を許してはならない」と「ロシアの団結」に訴えるだろう。

ロシアは、昨年秋に違法な「併合」を宣言したウクライナの4州で、たとえ戦時下でも偽の「地方選」を実施できるように法改正を行った。一方、ウクライナは、戒厳令を延長して、10月の議会選を延期せざるをえないだろう。

来年春の大統領選の実施も、反転攻勢の進捗にかかっている。世論調査での人気が示すとおり、ゼレンスキーが出馬すれば再選は固い。ただ、2019年との大きな違いは、ゼレンスキーはいまや「反戦」ではなく、国民の8割強が支持する「領土解放戦争」の象徴であるということである。

他方、敵国のエージェントを防諜の要職に任命した政治責任を含め、ゼレンスキー政権がロシアの全面侵攻へ十分に備えていたかという点は、選挙で最もセンシティブな争点となる。

野党は、昨年2月以降、国民統合の観点からゼレンスキー批判を抑制してきた。選挙戦になれば批判は復活する。ロシアの選挙介入は、野党によるゼレンスキー批判や国民の不満を煽ることで行われるだろう。

反転攻勢後にありうるゼレンスキー2期目は、これまで自らを批判してきた「24%」を取り込み、一層の国防強化、道半ばの汚職撲滅、戦後の復興に向けたプロの政策集団を作れるかが鍵になる。第1期ゼレンスキー政権の失敗を繰り返してはならない。

(保坂三四郎/国際防衛安全保障センター【エストニア】研究員) 

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