中国で大苦戦する日本車、中堅メーカーの行方 撤退準備進める三菱自、反転攻勢を期すマツダ

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中国市場ではEV化の急進とともに現地メーカーの存在感が高まっている。今年4月に行われた上海モーターショーでの中国勢の躍進振りに、日系メーカー幹部は危機感を募らせていた(写真:AP/アフロ)

「三菱自動車向けの仕事であまりにも多くの損失がかさみ、部品代の回収もままならない。債権の一部を放棄させられるという話すらある」。ある部品メーカーの幹部はそう憤る。

中国市場で大不振の三菱自、密かに進む撤退検討」で報じたように、三菱自動車の中国事業での販売不振の影響が広がりつつある。

同社は3~5月の3カ月間工場を停止する措置を取っていたが、6月以降も稼働しておらず、再開のめどは立っていないという。別の部品メーカーの幹部は「新車が売れていないと聞いていたが、想定以上に深刻なようだ。工場が止まってからはわれわれもまったく部品が作れていない」とため息をつく。

部品メーカーは自動車メーカーからの生産台数計画を基に自社の生産設備や人員を準備する。生産が計画に届かなければ、想定以上に固定費負担が重くなり、悪くすると損失が膨らむことになる。

中国撤退へ向け調整は進む

三菱自が2022年11月に投入したスポーツ多目的車(SUV)「アウトランダー」のガソリンエンジンモデル(マイルドハイブリッド)は販売計画を大幅に下回る状況が続く。2022年度(2023年3月期)には、中国の持分法適用会社に関連する特別損失105億円の計上を余儀なくされた。

アウトランダー1車種にとどまらず、中国での販売全体が落ち込んでいる。コロナ禍前の2019年度の約14万3000台から2022年度は約4万8000台と急減している。2023年度についても、約2万7千台とさらに減る見通しだ。

5月9日の決算発表の場で、中国事業の撤退について問われた加藤隆雄社長は「現段階では徹底は決定していないが構造改革は必要だと認識している」と回答。今期から始まる新たな中期経営計画で、東南アジアやオセアニア、アフリカといった自身が得意な市場に特化し、選択と集中を進める姿勢を鮮明にしている。

三菱自幹部などによると、社内で中国事業撤退の検討は着々と進んでおり、撤退時期や合弁を組む広州汽車との調整に関する議論が行われているという。ある三菱自幹部は「できるだけ早く決着させたい」と話す。

冒頭の部品メーカーは、三菱自の中国撤退を既定路線ととらえているという。同社幹部は「トヨタやホンダですら地場メーカーのBYDに競り負け、EV(電気自動車)の市場投入も遅れている。三菱自が中国で生きていけるとは考えていない」と厳しい見方を示す。

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