日産、社長に権限集中で急ぐ経営再建と独立確保 経営陣の不協和音はあったが総会に波乱なし

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内田社長の取締役選任に対する賛成率は94.53%、前年から4.33ポイントの下落だった(写真:日産自動車)

質疑応答の2人目だった。「今日グプタさんがお辞めになることが大きく報道されています。この4年間、日産が厳しい時にもグプタさんは決算でお話しされていましたが、この4年間を振り返ってどのように思っていらっしゃるのか」

そう株主が求めたのに対し、1人目の質問と同じく、回答したのは内田誠社長だった。「グプタCOOは、今まで『Nissan NEXT』の策定からいろんなオペレーションも含めて大きく貢献していただいた。そして、これから彼が次のステップへ向かうことにご理解いただければと思います」

日産自動車は6月27日、横浜市のグローバル本社で定時株主総会を開催した。要した時間は1時間46分、出席株主は492名で、昨年より5分短いが、出席者は238人増えた。ただ、総会全体は淡々と進んだ印象だ。

今年の総会は、事前に質問の受付方法が変更されていた。開会時刻の午前10時までに整理券を配布するところまでは例年どおりだったが、先着順から抽選式へと変わった。最終的に14人が質問し、大半は内田社長が答えた。この日の総会で退任する取締役でCOO(最高執行責任者)のアシュワニ・グプタ氏、筆頭独立社外取締役の豊田正和氏ともに発言の機会はなかった。

退任する2人はルノーとの交渉のキーマン

この総会前、両者が発言するか、発言するとすれば何を語るか、メディアを中心に関心が高まっていた。その理由は2つある。

まず、日産がフランスのルノーとの資本関係を見直す〝リバランス〟の交渉でキーマンと目されていたからだ。今年2月、ルノーの日産への出資を43%から15%に引き下げて、日産と「対等」な資本関係とすることで合意した。しかし、今年3月末までに予定していた最終契約はなされていない。

この交渉役を担っていたのがCOOのグプタ氏であり、交渉に強い影響力を持っていたのが元経済産業審議官の豊田氏だった。1999年から続く、ルノー傘下からの脱却は、日産関係者の悲願であると同時に、今後の経営の行方にもかかわってくる。

株主からは「アライアンスの最終契約はいつ頃をめどに考えているのか」という質問が出たが、内田社長は「日産の利益にきちんとつながる点を事細かく議論し、時間がかかっている」と述べるにとどまった。

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