秋に開始「コロナワクチンの追加接種」どうなる? XBB株は従来ウイルスと何が違う?薬は効く?

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世界で流行しているウイルスについて見てみよう。

6月22日付けのWHOデータでは、XBB.1.5が最多だ。一方、XBB.1.16やXBB.1.9.2が増加傾向にある。

オレンジ色が増加傾向の株、緑色が減少傾向の株(図版:WHOのサイトを参照し、筆者作成)

日本ではXBB.1.5は継続して減少する傾向にあり、XBB.1.16が増加傾向にある。いずれにせよXBB系統が多くを占めているので、しばらく優位は揺るがないと予想される。

次のワクチンはXBB株で決まり

ヨーロッパでは、ECDCの会議によりXBB株での単抗原のワクチン製造を推奨する旨が発表された。また、アメリカのFDAでも、XBB.1.5株に対するワクチン製造を推奨する方針が発表された。これまで世界のワクチン供給を担ってきた中心は欧米のビオンテックとファイザー連合、およびモデルナであり、供給チェーンの大きさからしても、今後もこれらのワクチンメーカーの方針がデファクトスタンダードとなることは変わりがあるまい。メッセンジャーRNAを使わない、タンパク質を使ったワクチンを作っているノババックスも、XBB.1.5株に対するワクチンを作る方針を表明している。

日本国内では、厚生労働省がXBB株に対してワクチンを製造し、秋以降の次回の接種に用いる方向性が発表された。XBB.1系統のワクチンを製造するようだが、世界の潮流に合わせて XBB.1.5のワクチンにするのか、それとも日本は独自にXBB.1.16についてワクチンを国内製造するのだろうか?

SARS-CoV-2は進化を続けているが、XBB.1.5、XBB.1.16、XBB.2.3株のスパイクタンパク質を構成するアミノ酸の違いはほとんどなく、スパイクタンパク質の形は、ほぼ同じだ。基礎研究および動物実験でも、XBB.1.5と比較して、XBB.1.16に対するXBB.1.5用ワクチンの効果は同等とされている。よって、XBB.1.16用のワクチンを製造する必要性は低い。よって、日本でもXBB.1.5株のワクチン製造で良いと考えられる。

すでにファイザーモデルナは、XBB.1.5対応の単価ワクチンを開発し、アメリカの当局に製造承認申請済みだ。ノババックスも準備が整っており、近々承認申請するものと思われる。

一方、日本国内でもメッセンジャーRNAワクチンの製造はなされている。しかしながら、現時点ではオミクロンBA.4-5など、すでに流行の終わった変異株に対するワクチン開発が行われているにすぎず、XBB.1.5など、これから必要とされるワクチンの開発は始まっていない。9月に接種開始するとなると、7月中くらいにアメリカで承認された新しいワクチンが、2カ月遅れくらいで日本でも承認され、10月頃供給されるスケジュールが現実的だ。国産ワクチンは、またしても国民の感染症予防には間に合わないことになろう。

久住 英二 内科医・血液専門医

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くすみ えいじ / Eiji Kusumi

1999年新潟大学医学部卒業。内科医、とくに血液内科と旅行医学が専門。虎の門病院で初期研修ののち、白血病など血液のがんを治療する専門医を取得。血液の病気をはじめ、感染症やワクチン、海外での病気にも詳しい。

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