あまりに強引な保険証廃止、医療の混乱は不可避 マイナカード一本化で"無保険状態"発生か
従来の健康保険証を廃止し、マイナンバーカードに一本化することなどを盛り込んだ「マイナンバー法等一括法案」が5月19日にも参議院で可決・成立する見通しだ。
デジタル庁や厚生労働省は「デジタル(DX)化によって重複投薬などが減り、医療の質向上が見込まれる」とメリットを強調する。だが、認知症高齢者の家族や介護施設の関係者などから、「マイナカードへの一本化には無理がある」といった声が上がっている。
保険証が廃止された後もマイナカードを取得していない場合、医療機関の窓口では健康保険の資格確認ができなくなる。その場合、後で払い戻しはあるが、いったん窓口で医療費の全額の支払いを求められる。
厚労省は「やむを得ない理由がある場合」に限って保険証に代わる「資格確認書」を新たに交付することで、こうした”医療難民”の発生を防ぎたい考えだ。ただ、資格確認書の交付対象は介護が必要な高齢者など一部に限られるうえ、従来の保険証とは違って健康保険の加入者自身による申請が必要だ。
政府は2024年秋に保険証の廃止を目指すとしているが、混乱が危惧されている。
厚労省によれば、マイナカードの累計の申請件数は4月23日時点で約9650万件、全人口に対する割合は76.6%に達している。2兆円以上の巨費を費やしてポイントを付与したことで申請が急増したためだ。しかし、全国民に行き渡らせることについては、事実上困難であることが明確になってきた。
介護施設は「カードを管理できない」
医師らで構成される「全国保険医団体連合会」(保団連)は3月24日から4月10日にかけて「健康保険証廃止に伴う高齢者施設等への影響調査」(特別養護老人ホームや老人保健施設、グループホームなどが対象で、有効回答数1219施設)を実施。保険証廃止に反対する意見が59%と多数を占めた。
回答した施設のうち83%で、利用者や入所者の保険証を家族に代わって管理していることが判明。マイナカードを本人に代わって申請することについては、全体の93%が「対応できない」と答えている。その理由としては「本人の意思確認ができない」(83%)、「手間・労力がかかり対応できない」(79%)などが上位を占めた。
また、利用者や入所者に代わってマイナカードの管理をすることについては、全体の94%が「管理できない」と答えた。その理由としては、比率の高い順に、「カード・暗証番号の紛失時の責任が重い」(91%)、「カード・暗証番号の管理が困難」(83%)、「不正利用、情報漏洩への懸念」(73%)などとなった。
保団連は医療現場に混乱をもたらすことや、患者の不利益になるなどとして、保険証の廃止とマイナカードへの一本化に反対している。
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