【男性不妊】保険適用で「無精子症」に広がる選択 不妊検査は夫婦一緒に、精液検査は1回ではダメ

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精索静脈瘤は、精巣の静脈に何らかの原因で血液が逆流し、静脈が腫れてコブのようになった状態を指す。精索静脈瘤があると精巣の血流が悪くなり、精巣の温度が上がって精子が形成されにくくなると考えられている。

精索静脈瘤の治療は手術が基本で、健康保険が適用される。手術は、静脈瘤ができている血管をしばり、血流を止める。残りの静脈が正常なので、その部分をしばったからといって血流が途絶えることはない。

「手術用の顕微鏡を使用する方法は、術後の再発率が低いことがわかっています」(白石医師)

術後は精巣内の温度が下がることなどから、精子が形成されやすくなる。術後2~3カ月経つと、約7割の人は精子濃度や運動率が改善するという。

「精索静脈瘤を治療すると、女性の年齢によっては自然妊娠が望めるほか、人工授精や体外受精、顕微授精の成功率も上がることがわかっています」(白石医師)

無精子症の“最後の砦”が保険適用

男性不妊の約15%を占めるのが、精液の中に精子が1つもない無精子症だ。精子がなければ、自分の子どもを持つことは望めない。

精子の通路が塞がれている精路通過障害で無精子症になっている場合を「閉塞性無精子症」と呼ぶ。「精路再建術」で精路が開通すれば自然妊娠を望める。しかし多くの場合は精路に問題はない「非閉塞性無精子症」で、根本的な治療はできない。そこで最後の望みとなるのが、「顕微鏡下精巣精子採取術(micro-TESE)」だ。

無精子症と診断されても、検査した精液中に精子が見つからなかっただけで、精巣内で精子は作られていることがある。

この手術では、顕微鏡下で精子が作られている精細管を見つけて、精子を採取する。精子が採取できる確率は約40%。2022年から保険が適用されている。自費の場合、病院によって約30万円程度かかっていたので、手術を受ける費用面でのハードルは下がっている。

「手術自体は難しいものではありませんが、精子がいる精細管を見分けたり、採取する精細管を最小限にとどめたりするのには、技術や経験が必要です。精巣は男性ホルモンを分泌する臓器なので、精細管を採取しすぎると男性ホルモンの値が低下し、将来、生活習慣病を発症するリスクが高まるのです」

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白石医師はそう話し、経験豊富な泌尿器科医のもとで手術を受けることを勧める。

精液検査の結果が悪かった場合、明らかな原因が見つからなかったとしても、最近は生活習慣病との関連も明らかになってきて、その改善により精子の数が増加することなどが報告されている。関連記事(【男性不妊】精子の質「30代がピーク」という衝撃)も参考にしてほしい。

(取材・文/中寺暁子)

山口大学医学部附属病院泌尿器科教授
白石晃司医師
1995年、山口大学医学部卒。アイオワ大学薬理学、山口大学医学部泌尿器科講師などを経て、2022年から現職。専門は男性不妊症、小児泌尿器科、性機能障害、泌尿器科腫瘍、ロボット手術、マイクロサージェリーなど。日本泌尿器科学会専門医・指導医。日本生殖医学会生殖医療専門医、など。
東洋経済オンライン医療取材チーム 記者・ライター

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