トヨタとホンダが「EV生産改革」でテスラを追撃 「ギガキャスト」や「モジュール構造」導入へ

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関係者によると、ギガキャストの導入を検討しているのはホンダも同じだ。

ホンダは、2020年代後半以降に投入する「MFD-BEV」と名付けた10車種以上で構成する次世代EV商品群の準備を進めている。これらの商品群では、さらなる自動化やアルミダイキャスト部品の採用拡大といった新たな生産ラインが適用される見通しで、ギガキャストも導入が検討されている。

ホンダの三部敏宏社長は2020年代後半に次世代EV専用工場を立ち上げると明言(撮影:尾形文繁)

興味深いのは、ホンダも車体を3つのモジュールで形成するトヨタと似たような案を温めていること。新ラインでは従来に比べて要員の3割削減、新車種に関わる費用を減らすなど飛躍的な生産効率の改善を図る。また、温室効果ガスの排出量を減らすという。

三部敏宏社長は6月21日の株主総会の場で「2020年代後半から次世代商品と合わせて、EV専用ラインの生産システム改革に現在着手している」と語っている。社内では、最終的には電池セルから完成車まで一貫して生産できる工場を2020年代後半に設置する計画が練られている。

EVで生産改革が進む切実な事情

自動車メーカーが抜本的な生産改革に取り組む背景にはEVならではの事情がある。基幹部品である電池のコストがかさむため、ガソリン車に比べて採算が厳しい。高価格帯が中心のプレミアムメーカーはまだコスト吸収余地があるが、大衆車メーカーはこれまでと次元が異なるコスト削減が必須だ。

ただ、そうした現実をわかっていながら、これまで日系メーカーは踏み出せなかった。生産改革はメリットと同時にリスクもあるからだ。

たとえばギガキャスト。一体成型された部品が破損した場合、まるごと交換することになるため修理費用が高くなるといった問題が指摘されている。実際、テスラ車で高額な修理費用を請求される事例が報告されている。アフターサービスの充実や修理費用を含めたコストパフォーマンスを強みとしてきた日本勢だけに大きなハードルになると見られているが、トヨタ幹部は「衝撃をどう抑えるかも含めて対応策についてめどはついている」と自信を示す。

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