三菱自、EV向け電池の調達戦略で抱えるジレンマ GSユアサなどと出資、電池製造子会社が焦点に

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三菱自動車の軽商用EV
経営再建中だった三菱自動車がようやく成長へ舵を切ろうとしているが、まだまだ課題は山積みだ(写真:三菱自動車)

円安を追い風に達成した業績改善を次に生かせるか。三菱自動車が新たな経営戦略を発表した。

現中期経営計画の目標である2023年3月期営業利益500億円という目標を前期に1年前倒しで達成。2023年3月期は1台当たりの単価上昇や円安を追い風に営業利益1700億円を見込む。生産子会社「パジェロ製造」の岐阜工場の閉鎖や、ヨーロッパ向け新車種投入の凍結、希望退職の実施などで固定費を2割以上削減。基礎体力の向上も大きく寄与した。

三菱自は2016年の日産自動車の傘下入り後、カルロス・ゴーン元会長の指揮の下、2010年代後半に拡大路線を邁進した。しかし、販売台数は思うように伸びず、過剰な生産設備や人員を抱え込んだことで採算が悪化。2021年3月期に最終赤字3100億円に陥った。

「1台当たりの稼ぐ力を引き上げる」

「新しい時代に対応するための備え、経営基盤の強化に挑戦したい」。加藤隆雄社長は3月10日、2024年3月期から始まる3カ年の中計発表会見で、そう強調した。

新中計では、2026年3月期に販売台数110万台(2022年3月期は93.7万台)、営業利益2200億円、フリーキャッシュフロー1500億円を掲げた。稼ぐ力を示すEBITDA(利払い・税引き・償却前損益)3000億円も、経営目標として初めて設定した。三菱自幹部は「1台当たりの稼ぐ力を引き上げ、将来への投資もしながら成長していくということだ」と話す。

成長戦略では電動化を加速する。世界販売台数のうち3割弱を占める東南アジアやシェア拡大傾向のオセアニアに加え、アフリカや中南米を重点地域として設定。今後5年間に投入する16車種(うち電動車9車種)のうち、12車種(うち電動車7車種)をこの地域で展開し、販売台数を引き上げる。一方で、ヨーロッパやアメリカ、中国と日本は電気自動車(EV)を中心とした電動化が先行して進むと予想するが、販売台数は現状維持を見込む。

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