トヨタとホンダが「EV生産改革」でテスラを追撃 「ギガキャスト」や「モジュール構造」導入へ

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また、「ギガキャストが導入されれば、車体部品メーカーにとっては仕事がなくなる」と、ある車体部品メーカーの幹部は危機感を示す。ギガキャストは部品点数と接合などの工数を減らし生産性を飛躍的に高める反面、当該部品や工程にかかわっていた部品メーカーにとっては仕事そのものがなくなる可能性がある。

トヨタやホンダはそれぞれ系列部品メーカーを抱え、密接な関係によるすりあわせの技術を生かし、緻密なものづくりを実現してきた。が、ギガキャスト導入によって、強みとしてきたサプライチェーンにひびが入りかねない。これはゼロからビジネスを構築してきたテスラとは異なる点だ。

莫大な投資も重荷になる。ギガキャストや大型モジュール、さらなる無人化・省人化に対応した生産設備は、物の流れから人の導線まで既存の工場レイアウトの大幅な見直しも必要になる。ホンダ幹部は、「世界中の工場で同じような設備を整えるには兆円単位の費用がかかる」と苦しい台所事情を吐露する。

反撃へ、トヨタは全固体電池を実用化

しかし、ここに来てリスクを恐れて足踏みしていられなくなった。主戦場であるアメリカや中国はEVの販売台数が急激に増えており、先行するテスラは稼げる仕組みを整えつつある。トヨタ幹部は「今までのやり方じゃEVはとても儲からない。テスラに徹底的に学んで(どうすれば儲かるか)わかってきた」と打ち明け、反撃に向け意欲的だ。

もっとも、テスラはCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスクのカリスマ性をブランド力の源泉として快走を続ける。ソフトウェアサービスや自動運転でも既存の自動車メーカーにはマネのできないスピード感を持っている。

トヨタは、生産改革と同時に大幅に性能を高めた次世代電池を2026年以降に投入すると発表。加えて、期待が高かったEV向けの全固体電池も2027年以降に実用化する見通しを示した。生産改革に次世代電池の量産立ち上げ、さらにはブランド力や商品力にどう磨きをかけるかも含めて、EVをめぐる競争が総力戦となることは間違いなさそうだ。

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横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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