「推しの魅力を伝えたい」オタクに一番大切なこと 大事なのは「自分だけの感情」をいかに表現するか

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でも、そういう言葉こそ、いったん忘れてほしい。「クリシェ=ありきたりな表現」は、あなた自身の表現を奪ってしまうから。

他人の言葉に支配されない

クリシェを禁止した先に、「自分だけの感想」が存在する。

『推しの素晴らしさを語りたいのに「やばい!」しかでてこない―自分の言葉でつくるオタク文章術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします

ありきたりな、それっぽい表現を使わずに、ちゃんと自分だけの感情、考え、印象、思想を言葉にする。それだけで、オリジナルな表現ができあがります。

クリシェを使わない訓練をしていくと、不思議と感想が書ける量——つまり文章のネタの数も増えてくるんです。

まずは、ありきたりな言葉ではなく、自分の言葉を大切にしてください。自分の言葉とは、つまり自分の感情であり、自分の思考のことです。

私たちは放っておくと、想像以上にすぐ他人や世間の言葉に支配されてしまう。「支配」と書くとちょっと大げさですけど、気を抜くとすぐに思考停止して、世間で使っている言葉をそのまま真似する傾向にあります。

たぶん人間は、そもそもそういう生き物なんでしょう。じゃないと、赤ちゃんは言葉なんて覚えられないですよね。

けれども、そんな人間の習性に抗って、自分だけの言葉を使ってみましょう。世間や他人がインストールしてこようとする言葉に対して、「自分は本当にその言葉でいいんだっけ」と立ち止まる。そして、自分だけの感情や思考を取り戻して言葉にする。これって、じつはすごく重要なプロセスなんです。

推しについて語りたいだけなのに大げさな〜! と思われるかもしれません。でも、推しを語るなんて、ただでさえ他人の影響を受けやすいジャンルです。

あなたにはありませんか? 同じものを好きな他人の趣味嗜好に、つい影響を受けてしまったこと。

「私は●●がすごくよかったと思っていたのに、同じ趣味を持つ友人が『●●は平凡だ』と言っているのを聞いて、なんとなく●●が微妙だと感じてしまった……」

●●に当てはまるのは、好きな映画でも場面でも人でも、なんでもいいです。こんな経験をしたことのある方は意外と多いんじゃないでしょうか。

好みくらいなら、他人の影響を受けてもいいんじゃないかと思うかもしれません。でも、これが感想だった場合、あなたが本当は伝えられたはずのあなただけの感想が、いつのまにか消え去ってしまうんです。そんなの、もったいないです!

せっかく感想を言葉にするなら、自分のオリジナルな感情を大切にしましょう! 世間や他人の言葉に流されずに、自分だけの言葉を使う訓練をすれば、きっとそれが習慣になります。

三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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