「天候を自在に制御する」が夢の世界ではない根拠 想定外の被害や自然の摂理に反することへの懸念も

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生活に大きな影響を与える気候をコントロールできるようになってきた(写真:ヨシヒロ/PIXTA)
着るだけで空を飛べる「ジェットスーツ」。危険から身を守ってくれる「バリア」、人に代わって働いてくれる「家事/育児ロボット」──。
私たちの日常にはまだ浸透していないが、SF小説や映画などで描かれてきたテクノロジーの多くが現実のものになりつつあることをご存じだろうか。元JAXAの工学博士で、宇宙ビジネスコンサルタントでもある齊田興哉さんが最新テクノロジーとビジネスの動向をまとめた『空想が実現する時代のビジネス地図』より、一部抜粋、再構成してお届けする。

気象による恩恵と被害

SF映画『ジオストーム』では、宇宙から地球上の気象をコントロールするシステムが登場する。映画ではどのような技術が使われているか不明だが、現実に天気はコントロールすることができるし、現在開発中のテクノロジーもある。

天気は農作物への恵みの雨や水力発電、乾燥による火災の予防など、私たちに恩恵を与えてくれるが、損害も多い。SDGsの目標13「気候変動に具体的な対策を」にも関係する分野だ。2021年に世界気象機関(WMO)が公表しているレポートによると、1970年から2019年までの50年間に、世界では1万1000件の災害が発生し、死者は200万人、経済損失は3兆6400億ドルにも及ぶ。とても大きな犠牲が発生しているのだ。

日本ではどうだろうか。例えば、2019年9月の台風15号では100億ドルの経済損失が、同年10月の台風19号では150億ドルの経済損失が出てしまっている。

ほかにも、気象の影響で動植物に被害が出て生態系が崩れてしまうこともある。われわれの食料である米、野菜、果物、家畜など、せっかく生育してきたのに気象により一瞬にして台無しになってしまうこともある。

また、人やクルマ、船舶、飛行機など陸上、海上、上空での移動や物流などの交通インフラにも大きな影響が発生する。干ばつが起きれば、飲料水や水力発電用の水が確保できなくなり、生活や健康にまで影響を及ぼす。

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