「原子力の技術と人材を維持することが重要」 どうする電源構成<2> 21世紀政策研・竹内氏

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たけうち・すみこ●慶応義塾大学法学部卒業。1994年東京電力入社。2012年よりNPO法人国際環境経済研究所理事・主席研究員(現職)。国立公園尾瀬の自然保護に10年以上携わり、農林水産省生物多様性戦略検討会委員や21世紀東通村環境デザイン検討委員等歴任。その後、地球温暖化国際交渉や環境・エネルギー政策に関与し、国連気候変動枠組条約交渉にも参加 (写真:今井康一)

ただ、原子力25%まで戻すことは厳しいという現実もある。世論の反対など政治的な不安定性、40年運転規制など原子力規制の不安定性、電力自由化によるファイナンスの不安定性が主な理由だ。原子力は膨大な投資の回収メドがなければできない。25%を維持する何らかの補完措置があれば別だが・・・。

――原子力のコストをどう考えていますか。

発電コスト検証ワーキンググループで議論されてきたが、一般の感覚からすると、防潮堤に何千億円、事故対策に何千億円もかかるのに原子力が安いというのは絶対ウソだと思うのはよくわかる。しかし、原子力が生み出す電力の膨大さを考える必要がある。燃料費が安いのは動かしがたい事実であり、それを前提に考えるべきだ。

地域振興に結びつかない賠償制度は見直すべき

ただ、原子力損害賠償制度は早急に見直すべきと考えている。コストの観点というより、今の制度では対個人の賠償をいくら充実しても、地域の復興にはなかなか結び付かない。原子力災害で問題なのは広範な被害をもたらして、地域の復興が難しいこと。私自身、時々福島を訪れて、そのことを感じる。この現状は何とかしなければと思う。

――核のゴミ問題の解決のメドがないまま再稼働することには世論の反発が強い。

再稼働すると廃棄物を増やすから、そんな無責任なことをすべきではないという人の目の前で、電気代の高騰によって仕事を失おうとしている人がいる。生きていくすべを失おうとしている人がいる。当面、中間貯蔵施設は重要になってくるが、何十年か先に必要となる最終処分場が決まっていないという理由で、再稼働を一歩もさせないというのは短絡的な見方だと思う。

原発によって供給される、安定的で安い電気というメリットを受けてきたのはわれわれ国民だ。温暖化の観点からも、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage=化石燃料使用で排出されるCO2の地中貯留)はまだ実験途上であり、再エネも重要だがコストが高い。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)でも、ありとあらゆる技術を総動員すべきとされており、原子力なしでは現実的ではない。

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