「親の愛情不足」の中で育った子に見えがちな特徴 安全基地になれない親は「精神的に未熟」

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しっかりとした自己認識や成熟したアイデンティティを育んでいくには、自分の感情や思考をじゅうぶんに掘りさげてから表に出すことが必要だが、それが許されなかったのだろう。
だから自分のことがよくわからず、精神的に親密になる能力にも限界があった。自分をよくわかっていないのに、ほかの人と本気でかかわっていくのは難しい。こうして自然な発達がさまたげられると、より深刻な問題点がさらに生じてくる。(73ページより)

おそらく彼らは子どものころ、精神的な経験を伝えたり、活用したりすることを許されなかったため、一貫性に欠ける大人になったのだろうと著者はいう。だから、しばしば矛盾した感情を表し、矛盾した行動に出るのだと。

精神的に未熟な親にモヤモヤを抱く人は少なくない

感情の起伏が激しく、自分がつじつまの合わないことを言ったりやったりしていることに気づかない。そのまま親になると、こうした特徴のせいで子どもを精神的に混乱させてしまうのだ。
親になった彼らは、そのときの気分で子どもをかわいがったり突き放したりすることがある。子どもはつかの間親とのつながりを感じても、いつ、また親に突き放されるかわからない。(74ページより)

もちろん、この論がすべてのケースにあてはまるとは限らないだろう。とはいえ個人的には、とても共感できる部分がある。冒頭で触れた「ある知人」とは、じつをいうと私自身のことだからだ。

母は少し前に亡くなり、以来、悲しみとも憎しみとも明らかに違う、燃え尽き症候群にも近い状態に陥っている。この実態のない感情をどう処理したらいいのかがわからず困っているのだが、反面、自分だけが特別だということではないのだろうなという思いもある。

精神的に未熟な親に対し、私と似たような、モヤモヤとした思いを抱いている方は、実際のところ少なくないように思えるからだ。

印南 敦史 作家、書評家

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いんなみ あつし / Atsushi Innami

1962年生まれ。東京都出身。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。「ライフハッカー[日本版]」「ニューズウィーク日本版」「WEBRONZA」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダ・ヴィンチ」など紙媒体にも寄稿。『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』(日本実業出版社)、『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)など著作多数。

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