「親の愛情不足」の中で育った子に見えがちな特徴 安全基地になれない親は「精神的に未熟」

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この文章を読んで思い出したのは、ある知人のことだ。彼は母親の支配下にあった人で、その母親とけんかをした高校生のころ、「お前は子どもなんだから、どんなことがあっても親に従わなければならない」と一方的に断言されたのだそうだ。

自分は間違っていないという確信があったため「なら、親が間違っていたとしても、子どもは従わなきゃいけないってこと?」と皮肉交じりに尋ねると、感情をむき出しにした母親は「そうだ」と断言したのだという。

そのときは、「ああ、自分は健全な親子関係というものとは無縁な人間なんだな」と感じるしかなかったそうだ。親も人間なのだから未熟な部分があるのは当然だが、こうしたことで悩み続けている人は確実に存在するようだ。

なお本書ではそんな、気持ちに共感したり感情をコントロールしたりすることに困難があり、安全基地になることができない親のことを「精神的に未熟な親(Emotionally Immature Parents)」と表現している。感覚的には納得できるが、はたしてそれはどういう大人のことを指すのだろう?

「成熟した大人」とはどういう人か

精神的な未熟さについて考えるにあたって、著者はまず「精神的に成熟する」ということについての再確認を試みている。曖昧な話ではなく、長年しっかりと研究されてきたテーマを紹介しているのである。

いくつかを抜き出してみることにしよう。

◆「精神的に成熟している」とは、他者と深い精神的なつながりを保ちながら、客観的かつ概念的に考えることができることをいう。精神的に成熟した人は、自分の判断で動くことができる。深い愛着を持ち、その独自性と愛着の両方を生活に自然にとり入れている。自分の望みをまっすぐに追い求めるが、そのためにほかの人を利用することはない。自分が育ってきた家庭の人間関係を引きずることなく、自分なりの人生を築こうとする。(ボーエン、1978年)(60ページより)

◆相手の気持ちにしっかりと寄り添うことができ、衝動も抑えられ、精神的な知性もある。心がおだやかで、自分の気持ちに正直でいられるし、ほかの人ともうまくやっていける。(ゴールマン、1995年)(61ページより)

◆客観的であろうとし、自分をよくわかっていて、欠点も認めている。(シーバート、1996年)(61〜62ページより)
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