NHKが予算問題であらわ「ガバナンス不全」の実態 ネット配信の議論は「受信料」置き去りで進行

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5月16日の経営委員会で、今回の問題について報告を行った稲葉会長から、再発防止策のとりまとめを求められた森下俊三経営委員長は次のように拒否している。

「経営委員会は業務執行に関与しません。執行の中身が適切か、妥当かということについて、経営委員会が判断することは難しいです。執行部が主体的に調査・検討したうえで、再発防止策を整理し、経営委員会に報告していただければ」

会議では終始、2007年の改正放送法を根拠に、再発防止策の検討などの業務執行には関与しないというスタンスを貫く経営委員会の委員ら。これに対し、稲葉会長が「それでは経営委員会としての機能が発揮できない」と気色ばむような一幕もあった。

一連のやりとりについて、とある民放幹部は「禅問答のようになっていて驚いた。ガバナンスの問題があらわになった」と話す。

2007年の改正放送法は、NHK職員の不祥事を受けて、経営委員会の監督機能を強化するために見直されたものだ。その中では、経営委員会の過度な関与による番組編集への干渉などに一定の歯止めをかけるため、経営委員会の具体的な議決事項が条文に列記されている。

業界内からは、「経営委員会が自分たちは関係ないかのように振る舞うのは、改正の趣旨に沿っていない。経営委員会が何のためにあるのか、経営委員の人すらわかっていない」と呆れる声も上がる。

6月上旬に開催された、NHKのインターネット活用業務について議論を行う総務省の有識者会議でも、東京大学の宍戸常寿教授が「監査委員と経営委員、それぞれ執行部と並んで責任は重たい。経営委員会からもしっかり説明をしてもらう必要がある」と釘を刺す場面があった。

後回しにされるネット配信の「受信料問題」

今回の予算計上がメディア業界の強い批判を招いた背景には、衛星放送をネット配信するか否かという以前の、さらに根深い問題が関係している。それはNHKのネット配信業務をめぐる議論が、「受信料」という制度そのもののあり方に触れないまま、強引に進められているということだ。

前出の総務省の有識者会議において、日本民間放送連盟(民放連)と日本新聞協会はこれまでにも、ネット配信と受信料徴収の兼ね合いについて意見や質問状を提出してきた。

その中で両者は「インターネット視聴と受信料制度・財源との整合性の検討が必要」(民放連)、「受信料を基に築き上げてきた(NHKの)巨大な組織や人員を活用すれば、報道機関は公正な競争が難しいのではないか」(新聞協会)などと厳しく指摘している。

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