NHKが予算問題であらわ「ガバナンス不全」の実態 ネット配信の議論は「受信料」置き去りで進行

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放送法は「NHKの放送を受信できる受信設備を設置した者は、NHKと受信契約を締結しなければならない」と定めているが、ネット配信での視聴に関しては受信料の定めがない。テレビ離れが進む中で、テレビを持たず「NHKプラス」のみを利用する視聴者から受信料をどう徴収するかは、NHKにとって悩ましい問題だ。

NHKは、「NHKプラス」のダウンロード者から、同意を得たうえで受信料を徴収することを基本路線とするもようだ。しかし、現行の放送法との整合性の問題や、「サブスクサービス」という印象を与えかねない懸念もあり、詳細な方針は曖昧にされたままとなっている。

そうした事情もあってか、ワーキンググループでは民放連や新聞協会の質問に対して、いまだ回答が出されていない。民放連の堀木卓也専務理事は「受信料はいちばん根本的な問題。その議論を避けてネット配信の方向性を決めることはできない」と指摘する。

「必須業務」格上げ後の詳細は明らかにせず

ネット配信における受信料徴収のあり方を後回しにして、有識者会議で活発に議論されているのが、ネット活用業務の「必須業務化」だ。

NHKはネット活用業務を必須業務に格上げすることで、ネット配信事業をより強化したい意向だ。必須業務化した曉には、「情報空間の参照点の提供」や「信頼できる多元性確保への貢献」を根拠に、放送と同様の効用をもたらす範囲に限って事業を実施していくとの説明を繰り返している。

ただ、必須業務化によってネット配信に関わる予算や業務内容を具体的にどう変えるかについては明らかにしていない。

こうした曖昧な説明も、民放などメディア業界がNHKに対する不信感を募らせる要因となっている。業界関係者は「何のために必須業務化するのか、しっかりしたロジックを用意できずに、このような説明になってしまったのだろう」と分析する。

NHKはネット活用業務の必須業務化に当たってガバナンスを強化する方針を示しており、経営委員会の監督によってガバナンスを利かせるなどと説明している。しかし、前出の議事録の公開によって「経営委員会がチェックするから大丈夫、という論理は崩れ去った感がある」(民放幹部)。

今回の予算問題で明らかになったのは、ずさんな体制の下で業務拡大を進めようとしている巨大組織の実態だ。NHKは今の体制のまま、テレビ離れという難題に対処できるのか。課題は山積みだ。

髙岡 健太 東洋経済 記者

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たかおか けんた / Kenta Takaoka

宮崎県出身。九州大学経済学部卒。在学中にドイツ・ホーエンハイム大学に留学。エンタメ業界担当を経て、現在はM&Aや金融業界担当。MMTなどマクロ経済に関心。

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