NHKが予算問題であらわ「ガバナンス不全」の実態 ネット配信の議論は「受信料」置き去りで進行
「再発防止に努めるというだけでは済まされない。ガバナンス以前の問題で、不誠実だ」
WOWOWの田中晃社長は5月末の定例記者会見で、そう声を荒らげた。
怒りの矛先はNHKだ。衛星放送(BS)番組のインターネット配信が認可されていないにもかかわらず、その関連予算を計上していた問題をめぐり、メディア業界から怒りの声が噴出している。
放送法上、NHKの業務は、①必須業務、②任意業務、③必須業務と任意業務の遂行に支障のない範囲で実施できる目的外法定業務の3つに分けられる。ネット活用業務は現状、必須業務である放送を補完するための任意業務に位置づけられ、年間200億円の予算上限が設けられている。
NHKは総務大臣の認可を受けたインターネット活用業務に関する実施基準の下、2020年よりネット配信サービス「NHKプラス」をスタートさせた。実施基準は地上波番組のネット同時・見逃し配信に関する要項を定める一方、衛星放送番組の配信については認めていない。
経営委員会と執行部で「なすり合い」
ところがNHKは2022年末、衛星放送番組をNHKプラスで2024年度から本格配信する前提で、設備整備事業を一部役員らの稟議で承認。実施基準に抵触しないか十分な検証もないまま、2023年度予算に関連支出約9.5億円を計上したという。
民間放送局をはじめとするメディア業界は、NHKのネット配信業務への進出に対して「民業圧迫」などの観点から、かねて懸念を示してきた。そうした中での不注意な予算計上なだけに、多くの関係者から怒りの声が上がるのも当然だった。
この問題がNHK内部で認知されたのは2023年4月上旬。総務省に報告をしたのが、報道が出る直前の5月末で、公表が大幅に遅れたことも問題視されている。NHKの稲葉延雄会長は国会で、「事案の重要性から鑑みても、皆様に迅速に報告すべきものだった」と陳謝した。
NHKのガバナンスの脆さはこれだけにとどまらない。5月中旬に開催された経営委員会の議事録が公表されると、稲葉会長ら執行部と経営委員会の「責任のなすり合い」ともいえるやり取りが明らかになった。
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